2011 Fiscal Year Research-status Report
社会的行動の評価による揮発性有機化合物の発達神経毒性とそのバイオマーカーの開発
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23510084
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
上野 晋 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (00279324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笛田 由紀子 産業医科大学, 産業保健学部, 講師 (10132482)
吉田 安宏 産業医科大学, 医学部, 准教授 (10309958)
石田尾 徹 産業医科大学, 産業保健学部, 講師 (90212901)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | フロン代替物質 / 1-ブロモプロパン / 胎生期曝露 / 神経行動 / 社会的行動 / 飼育環境 / 海馬神経回路 / オープンフィールド試験 |
Research Abstract |
本研究では揮発性有機化合物の発達神経毒性、特に社会的行動を中心とした神経行動による評価に焦点を当てている。本年度は洗浄溶剤として汎用されているフロン代替物質の1-ブロモプロパン(以下1BP)の胎生期曝露モデル動物を作製し、社会的行動の出現と関連があるとされる離乳後の飼育環境について、その違いにより胎生期曝露の影響にも違いがあるかを検討した。Wistar系のラットを交配させ、妊娠を確認した翌日から出産前日までの20日間、吸入曝露チャンバーを用いて1BPを濃度700ppmにて吸入曝露(6時間/日)させた(対照として同型チャンバー内で同期間、新鮮空気を吸入させた)。1BP曝露ラットより得られた仔ラットを1BP胎生期曝露群、新鮮空気吸入ラットをより得られたものを対照群とし、生後14日齢でその一部はけいれん誘発剤であるペンチレンテトラゾールを腹腔内投与した。また雄性仔ラットを生後20日齢で離乳し、社会的行動の出現に同日より個別 (1匹/ケージ)および集団 (2~3匹/ケージ)での飼育を開始した。離乳後2日目から3日目にかけてオープンフィールド試験を施行し探索行動量について検討した。14日齢の対照群で誘導されるけいれん発作の出現は胎生期曝露群で抑制されたが、この結果はこれまでに電気生理学的解析によって得られた14日齢の神経回路興奮性の変化と部分的だが一致する。また4週齢での探索行動量について、対照群で集団飼育と個別飼育を比較したところ、総行動距離ならびに総行動時間に有意差は認められなかった。しかしながら胎生期曝露群では有意差が認められ、総行動距離、総行動時間いずれも集団飼育の方が低い値を示した。飼育環境の違いは離乳後わずか数日間であるが胎生期曝露の有無による影響が出現しており、この影響が社会的行動にも及ぼすものであるか現在検討中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
計画では今年度内に社会的行動の評価まで行う予定であったが、飼育環境の違いにより1-ブロモプロパン胎生期曝露の影響が探索行動量において出現することが判明した。飼育環境は成長後の社会的行動の出現と関連のある因子であることから、胎生期曝露と飼育環境、そして社会的行動という三つの要素とそれらの相互影響について検討する必要がある。またバイオマーカー探索のための基礎データについては実験は開始しているものの現在までに有用なデータが得られていないため、次年度も引き続き実験を行う必要性があると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降も引き続き胎生期曝露モデル動物の作製と神経行動、特に社会的行動についての評価を行う。今年度購入した社会的行動評価用のシステムは対象がマウスであるので、次年度以降はマウスを用いたモデル動物の作製にも着手する。その基礎データの獲得のためにも胎生期曝露モデルばかりでなく急性あるいは亜慢性曝露モデルの作製も必要となることが考えられる。バイオマーカー探索については数種の培養細胞を用いての直接作用から検討することに加え、曝露モデル動物から採取する遺伝子の解析にも重点を置いて引き続き検討していく。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
(1)胎児期曝露動物の社会的行動の評価24年度以降も引き続き胎児期曝露動物の作製と社会的行動の評価を行い、できる限り多くのデータを収集する。特に飼育環境についても検討する必要性があるため、計画よりも多くの実験動物を使用することが想定され、そのための費用を計上する必要性があると考えている。(2)急性~亜慢性曝露動物の作製と神経毒性バイオマーカーの探索神経毒性バイオマーカーの探索を目的として化学物質に感受性がより高いといわれる若年期(4~6週齢)の動物を用い1BPの急性~亜慢性曝露モデル動物を作製する。得られた急性~亜急性曝露モデル動物の神経行動について、特に活動量(ホームケージ活動量ならびに探索行動量)を指標に神経行動を評価するとともに一部の動物からは大脳皮質・海馬を採取して、海馬GABAA/nACh受容体構成サブユニットの遺伝子・タンパク質発現量をリアルタイムPCR法やウェスタンブロッティング法により定量解析する。
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