2013 Fiscal Year Annual Research Report
社会的行動の評価による揮発性有機化合物の発達神経毒性とそのバイオマーカーの開発
Project/Area Number |
23510084
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
上野 晋 産業医科大学, 産業生態科学研究所, 教授 (00279324)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笛田 由紀子 産業医科大学, 産業保健学部, 講師 (10132482)
吉田 安宏 産業医科大学, 医学部, 准教授 (10309958)
石田尾 徹 産業医科大学, 産業保健学部, 講師 (90212901)
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Keywords | 胎生期曝露 / 発達神経毒性 / 1-ブロモプロパン / 海馬神経回路 / 臭素イオン / ペンチレンテトラゾール |
Research Abstract |
本研究では揮発性有機化合物の発達神経毒性の評価とそのバイオマーカーの開発を目的としている。揮発性有機化合物である1-ブロモプロパン(以下1BP)の発達神経毒性について胎生期曝露ラットを用いて検討してきた。これまで1BPの曝露指標として臭素イオン濃度を用いてきたが、ブロム中毒として知られるように、そもそも臭素イオンには中枢神経作用があることから、昨年度までに得られた1BPの胎生期曝露による影響が臭素イオンの蓄積によるものであるかどうかを検討することにした。Wistar系ラットを交配させ、妊娠を確認した翌日から出産前日までの20日間、20あるいは25 mMの臭化ナトリウム(NaBr)を飲水として投与した。得られた仔ラットの生後14日齢においてけいれん誘発剤ペンチレンテトラゾールで誘発されるけいれん(強直)発作の頻度について検討した。その結果、NaBr胎生期曝露仔ラットでは1BP胎生期曝露仔ラットの場合と類似した強直発作誘導の抑制が認められた。したがって1BP胎生期曝露における神経毒性には蓄積した脳内臭素イオンが関与している可能性が考えられ、臭素イオン濃度が曝露指標として有用である可能性が示唆された。 一方、脳内1BPの半減期は不明であったことから、マイクロダイアリシス法を用いて脳内1BP細胞外濃度について検討した。Wistar系雄性ラットの海馬に微小透析プローブを挿入し、濃度3,000 ppmで4時間の1BP吸入曝露を行う間、経時的に透析液を回収し1BP濃度を測定し、得られた結果より半減期を計算したところ5.9±2.1時間であり、以前に報告した血中半減期(20分)の約18倍長いことから1BPは脳内蓄積性が高いことが示唆された。 1BPのように臭化された構造を持つ揮発性有機化合物は多いが、1BPと同様に臭素イオン濃度が発達神経毒性の指標となり得るかどうかは今後の検討課題である。
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