2012 Fiscal Year Research-status Report
発達期脳へのメチル水銀毒性に対する食物由来セレン化合物の抑制機構に関する研究
Project/Area Number |
23510085
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Research Institution | National Institute for Minamata Disease |
Principal Investigator |
坂本 峰至 国立水俣病総合研究センター, 疫学研究部及び国際・総合研究部, 部長 (60344420)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
安武 章 熊本大学, 自然科学研究科, 研究員 (20344418)
丸本 倍美(澤田倍美) 国立水俣病総合研究センター, 基礎研究部, 主任研究員 (00335506)
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Keywords | メチル水銀 / セレノメチニオン / ラット / 発達期の脳 / クジラ |
Research Abstract |
哺乳ラット(14日齢、雄)を使った実験で、MeHgによる発達期の脳における神経細胞死がSeMetの同時投与によって抑制されたことを示す最初の報告が、Sakamoto M, Yasutake A, et al. Selenomethionine protects against neuronal degeneration by methylmercury in the developing rat cerebrum. Environ Sci Technol.(IF5.2) 2013 Mar 19;47(6):2862-8. doi: 10.1021/es304226h.に掲載された。 その効果はMeHgの中枢への移行抑制によるものではなく、組織内でのMeHgとSe化合物(SeMetから派生)との不活性なメチル水銀とセレンの複合体の形成によるものと推察される。 2007-2008年に太地町沖で捕獲されたスジイルカ(n=29)、マゴンドウ(n=30)、ハナゴンドウ(n=31)ハンドウイルカ(n=31)に関し、総水銀、メチル水銀、セレンの濃度測定を筋肉部位で行った。 歯クジラ類は、比較的高濃度の水銀を体内に蓄積するが、無機化能力が高く、メチル水銀は一定の濃度で頭打ちになるようであった。無機化された水銀はセレンとモル比1:1で結合し、非活性で無毒なセレン化水銀に変化することが示唆された。これらのことから、歯クジラ類は自身の解毒作用として、メチル水銀を無機化し、更に無機化銀をセレン化水銀として無毒化して体内に蓄積していると考えた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
MeHgによる発達期の脳における神経細胞死がSeMetの同時投与によって抑制されたことを示す最初の報告が、Sakamoto M, Yasutake A, et al. Selenomethionine protects against neuronal degeneration by methylmercury in the developing rat cerebrum. Environ Sci Technol.(IF5.2) 2013 Mar 19;47(6):2862-8. doi: 10.1021/es304226h.に掲載された。 ヒトが歯クジラを摂取する場合、無機水銀の殆どは消化吸収されない無毒なセレン化水銀と推測されるので、総水銀濃度の値が高いことはそれほど問題にする必要は無いと考えられた。但し、依然としてメチル水銀は2-7ppmのレベルで歯クジラ肉に存在しており、厚生労働省の妊婦への魚介類の摂取と水銀に関する注意事項にあるように、妊婦は特に、その摂取に注意を払う必要があると考えられ、クジラ肉の摂取に関するリスク評価に役立つ成果が得られた。本成果は、今年の7月に行われる国際水銀会議において発表を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
大脳に神経変性を生じる胎児性水俣病モデルラットで、自然界由来のセレノメチオニンが発達期脳に於けるメチル水銀による神経変性を直接防御することが実証できた。但し、肝臓においてセレンの毒性が現れてしまったので、今後はより低濃度のメチル水銀影響に関し、肝臓に影響を及ぼさない低用量のセレノメチオニンで、神経行動学的及び生化学的に検討する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度に計画していたラット実験に関しては、研究分担者不在(出産休暇及び育児休暇)となり、実験を行うことができなかったため研究費を使用できなかった。 最終年度となる25年度については、幼弱ラット購入を購入し、前回より低濃度のメチル水銀とセレノメチオニンを用いて実験を行い、水迷路の実験セット及び幼弱ラット用の明暗箱を購入し、神経行動学的な検索を行う。また、脳中グルタチオン、グルタチオンペルオキシダーゼ等の測定は新規に研究協力者に入れた群馬大学の亀尾助教が測定キットを購入して実施する。加えて、脳中の水銀分析、セレン分析を実施する。
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Research Products
(5 results)