2012 Fiscal Year Research-status Report
食品油脂廃棄物をメタンエネルギーに資源化するオゾン併用省エネ型嫌気好気法の開発
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23510109
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Research Institution | Kochi National College of Technology |
Principal Investigator |
山崎 慎一 高知工業高等専門学校, 環境都市デザイン工学科, 准教授 (60290821)
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Keywords | 嫌気好気法 / グリストラップ / UASB / DHS / オゾン / メタン |
Research Abstract |
本研究の目的は、小規模事業場における廃水処理対策の推進を目指して、その処理過程で排出され、処理・処分で問題となるグリストラップ油脂廃水を省エネかつ効率的に処理し、また、メタンエネルギーとして再資源化する新規な廃水処理システムを開発することである。具体的には、生物難分解性の油脂成分をオゾンで前処理をして高級脂肪酸の毒性を軽減させた後、省エネ型嫌気好気法(UASB-DHS法)で後処理を行い、その有機成分からメタンエネルギーを効率的に回収する方法を実験的に検討する。この研究の成果は、公共用水域の水質改善、地球温暖化の防止対策、省資源・省エネルギーの推進、廃棄物処分問題の解消に大いに貢献するものであり、技術的・社会的な意義は非常に高い。しかし、この油脂廃水の処理にはオゾン処理が注目されているが、その分解メカニズムや最適な供給条件に不明な点が多い。そこで、高知工業高等専門学校学生寮の食堂厨房施設のグリストラップ内から採取した油脂廃水を使用して、平成24年度は、23年度の研究成果を基に、まず回分実験でオゾンの油脂分解への効果を検討した。その結果、油脂廃水に対してオゾン供給量を増加させると油脂の指標であるn-ヘキサン抽出物質の濃度を減少させる効果がみられた。また、この油脂成分をガスクロマトグラフィーで分析した結果、オゾンの供給効果は含有する高級脂肪酸の種類によっても異なることが確認された。一方、オゾン-UASB-DHS法の室内実験装置を使用した連続処理においては、廃水中に高濃度に含まれる油脂成分はUASB槽の処理性能を著しく低下させること、油脂廃水をオゾンで前処理することで油脂の阻害影響が軽減できること、また、UASB槽から発生したメタンガスは再資源化エネルギーとして回収できることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本申請における研究目的は、省エネ・省資源型で廃棄物が低減できるオゾン-UASB-DHS法を提案し、グリストラップ油脂廃水をメタンエネルギーとして再資源化する新規な生物学的廃水処理システムを開発することである。高知工業高等専門学校学生食堂の厨房施設から排出するグリストラップ油脂廃水を用いて、平成24年度は23年度の研究成果に基づいてさらに詳細な検討を進めるために回分実験及び連続実験を継続した。また、23年度末には油脂廃水に含有する高級脂肪酸濃度を分析するガスクロマトグラフィーが導入され、油脂成分の分解メカニズムや生物処理への阻害影響に対して、さらに詳細な検討ができるようになった。回分実験では、オゾンの供給量を増加させることで油脂分解への効果が高くなることが確認された。しかし、本実験で使用しているオゾン発生装置は構造上の問題で現在の濃度より高いオゾン濃度を供給できない状況になっている。現在、オゾン発生装置の製造元に検討を依頼しており、今後、高濃度オゾンの供給が可能になった時点でオゾンの油脂分解機構の解明に向けてさらなる検討を行っていく予定である。オゾン- UASB-DHS法の室内実験装置を使用した連続実験については、次第に油脂廃水の供給量を増加させて運転しているが、予想以上に油脂の阻害影響が大きく、正確なデータを採取することに苦慮しているが、処理性能やメタンガスのデータはほぼ順調に採取できている。現在までの達成度としては、オゾンの油脂分解の効果についてはさらに詳細な検討が必要であるが、連続実験においては現状ではほぼ必要なデータが採取できていることから、研究の進捗としてはおおむね順調に進展していると判断される。
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Strategy for Future Research Activity |
当該研究課題の最終年度である平成25年度は、油脂の生物分解に及ぼす高級脂肪酸の影響を回分実験においてさらに詳細に検討を行う。また、室内実験装置を用いた連続実験では、処理水質やメタン生成量の把握などの処理適用可能性の検討を行った後、油脂成分濃度や負荷の変動が処理性能に及ぼす影響、処理温度や原水pHの調整など、より安定的で効率的な運転方法や経済性の検討を行い、従来技術との比較による本システムの油脂汚泥処理への適用の実用性を総合的に評価していく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度の研究費は直接経費で50万円であり、実験や分析に必要な消耗品(試薬やガラス器具など)で30万円、旅費として研究打ち合わせと成果発表に20万円を使用する予定である。なお、24年度の未使用分145582円は、25年度に消耗品又は旅費として使用する予定である。
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