2011 Fiscal Year Research-status Report
有害化学物質吸着能と分解能をハイブリッド化した安全な多機能環境浄化材料の開発
Project/Area Number |
23510113
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
大澤 敏 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (50259636)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾関 健二 金沢工業大学, バイオ・化学部, 教授 (40410287)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 環境材料 / ナノ材料 / 微生物 |
Research Abstract |
キトサンナノファイバーファイバー径10~200nm(A)と500~800nm(B)の2種類について、まず多孔質体の成形への影響を調べた。Bでは凍結乾燥により多孔質体を形成できるが形状維持性が悪く、水に浸漬し浸とう後1週間で形状崩壊した。一方、Aでは良好な多孔質体が得られた。Aのナノファイバー懸濁液に麹菌胞子のみを添加し、多孔質体とした後、培地に浸漬させたところ、麹菌が発芽し良好なキトサンナノファイバー/麹菌複合体が得られた。しかしながら懸濁液に培地成分と胞子を同時に添加した場合には、形状維持性が低下するという問題が生じた。この問題は、コハク酸を添加して架橋させることで解決できた。ナノファイバー作製の前処理では、ボールミルによる方法では、ナノファイバー化しにくく、ミキサーによる処理が有効であることが分かった。 上記Aキトサン懸濁液の濃度4%を用いると、孔径20~50μmの多孔質体が得られ麹菌生育や菌糸の接着に最適な微細形状を得ることができた。この複合物を200ppmのホルムアルデヒド溶液に浸漬させると、4日でホルムアルデヒド濃度がゼロとなり、再び200ppmの溶液に浸漬させることを3回繰り返しても浄化能力の低下がみられなかった。 本研究では、飲料水の浄化も視野に入れている。そこでシクロデキストリンをキトサンナノファイバーに修飾し、トリハロメタン、トルエン、キシレンの選択吸着性を調べた。αシクロデキストリンではトリハロメタンに対する選択的包接吸着性が認められた、トルエンはαまたはβ、パラキシレンはγシクロデキストリンが有効であった。DNAとの複合体形成では、懸濁液中で脂質と複合体を形成させた後、多孔質化するこが有効であった。 以上のように生活圏での安全な微生物キトサン複合体の作成条件やその分解能力に関する重要な知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度(前半)の目的である、ナノ材料と麹菌の複合プロセスについては予定通り進んだが、キトサンと微生物の複合体に微生物の栄養源を添加した場合に多孔質体の耐水強度と形状維持性が低下する問題が生じた。この問題の解決に若干時間を要した。キトサンのヒドロキシ基を生体内の代表的な代謝物質であるコハク酸(ジカルボン酸)で架橋することで安全性を損なうことなく形状維持性を十分に向上できた。 23年度後半では、有害物質の選択的包接・吸着を目的として、キトサンへのシクロデキステオリンの導入を行った。シクロデキストリン環の大きさにより、トリハロメタン、トルエン、パラキシレンの選択吸着が認められた。一方バイオマスDNAとナノファイバーキトサンの複合体を形成できた。その選択吸着性に関しては疑似ダイオキシン物質の吸着性評価にとどまったが、おおむね順調といえる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度の計画は概ね予定通りであり、安全なナノ材料と安全な微生物の複合化(ハイブリッド化)による有害物質の吸着と分解評価の基礎ができた。今後は複合物の有害物質選択吸着性の評価から始め、その分解性の評価まで様々な有害物質に適用していく。 また、平成24年度の当初計画である、麹菌そのものの、有害物質耐性評価と耐性菌の育種を進める。培地を添加した場合の複合物の形状維持性が平成23年度に解決されているので、培地組成の検討も十分に行い、本研究の当初目的を達成する。気相の浄化は24年度後半から徐々に始め、25年度に重点的に行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は、複合物の形状維持性という材料の実用化に最も重要な部分の改善を実験計画に追加する必要が生じたため予算の執行も当初予算のうち、後半部分の分析カラム(消耗品費)の一部未使用が生じた。平成24年度は、分析カラムの購入により、様々な物質についての吸着性評価を早期に行う。さらに、当初予定である複合物の有害物質の選択吸着と吸着物質の分解性評価、有害物質耐性株の育種を行うために必要な消耗品、多孔質体形成を円滑に行うために必要な真空ポンプの購入を行う。アルデヒド類、アクリルアミド、芳香族化合物に対する麹菌による浄化能力をスクリーニングし、発育阻止濃度を明らかにし本ハイブリッド材料の適応範囲を広げ、複数の有害物質が共存した場合の選択的および複合的な分解能力を評価するためのGC-MS用カラムを購入する。
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Research Products
(1 results)