2012 Fiscal Year Research-status Report
フラーレン様構造を持った機能スイッチング型ペプチド立体の創製
Project/Area Number |
23510131
|
Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
田村 厚夫 神戸大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (90273797)
|
Keywords | ナノ構造 / ペプチド / ナノチューブ |
Research Abstract |
今年度は、まずウイルスキャプシド等の構造を参考にして、規則的な構造を有するナノ構造体をβ型三叉路とへリックス型バンドル化を工夫したペプチドの自己集合により構築することを目標とした。三叉路構造としてβ-annulus構造即ち3本のペプチド鎖がβ-ストランドに類似した水素結合により形成される三叉型3量体構造を用いた。この末端に相補的ヘリックス会合形成配列を追加した新たな2種類のペプチドF-K3/F-E3を合成した。そしてこれらペプチドの自発的会合により、フラーレン様のケージ構造の構築を試みた。 実験ではCD測定、DLS測定、AFM観察を行い、2種ペプチドの混合前後における二次構造変化、粒子径変化、形状変化から会合体の形成について検証した。次に、形成された会合体の構造形態を超遠心測定、ゲルろ過クロマトグラフィで探り、最後に会合体が有する機能について、ゲスト分子との相互作用の観点から測定を行い検討した。 これらの結果から相補的ヘリックス配列の性質により会合していること、また2種会合条件においてもβ-annulus型3量体が健在であることが明らかとなった。さらに形成された巨大球状粒子の表面や内部構造について調べるために、ゲスト分子として種々のタンパク質を用いて測定を行ったところ、Myoglobinが取り込まれていることが確認できた。これはペプチドの会合による巨大粒子形成に伴い、その内部にタンパク質分子が取り込まれたことを示す結果であり、球状粒子内部にそのようなゲスト分子を内包できる空間が存在することを示すものでもある。以上の結果から、このようにデザインしたペプチドは、自己会合によって規則的な構造と機能を有した球状ナノ粒子を形成していることが示された。 さらに人工設計ペプチドの金属結合能付与や酵素能付与など多機能化研究を進めている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、前年よりリファインされた配列設計によって、明確にフラーレン様のケージ構造をとる人工設計ペプチド分子の創製に成功した。この要因として、設計がうまくいったことに加え、実験的にも通常は困難で収率が悪い(あるいは全く取れない)長い鎖長のペプチドが2種合成ができたことが挙げられる。この結果、2種のペプチド分子間に特異的相互作用を引き起こすことが出来た。 機能面でも、このこのケージが他のタンパク質分子の取り込みを行うという新機能を有していることを発見した。一方、低分子はケージの網をすり抜けるため保持できず、適度な選択性も有していた。その他の人工設計ペプチドにおいても、金属結合等の機能の付与、および選択性の向上、結合力の増強、蛍光性有機物質との結合などの機能増強を図ることができた。 機能スイッチングについては、pHによってへリックスバンドルの形成有無をコントロールすることができることを示した。これを発展させ、自在に構造形成を制御することで機能のOn/Offができることを目指している。
|
Strategy for Future Research Activity |
目的としていた分子構造(フラーレン様ケージ構造)、pHによる構造形成の有無はすでに達成することができた。また、機能面でも、タンパク質分子の取り込み能を獲得した。また、他のペプチド人工設計において、酵素機能の発現、選択的金属結合能の獲得、蛍光性有機物質との結合を実現した。このことから、ケージ構造を中心としたペプチド集合体構造に、これまでの多機能を組み合わせていくことが今後の研究推進の中心となる。 具体的には、機能面のうち人工設計したペプチド分子でしかできない新機能として、希少金属との結合、特異的タンパク質分解酵素機能の発現を達成したい。 構造面でもさらにリファインできる可能性がある。今回は、2種類のペプチドF-K3/F-E3を設計したが、合成も2種類となるため実用化には1種類でケージ構造を形成するものの設計を行いたい。ただし、設計上の困難としては、分子間相互作用の特異性が減少するため、会合状態の制御(会合分子数の制御)が困難になるかも知れない。これは、中心となる三叉路構造の工夫によって克服できればと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究設備tとしては、現存のクロマトグラフィー、ペプチド合成機、HPLC、質量分析器、赤外分光装置、円二色性分光器、原子間力顕微鏡装置、等温滴定型熱量計等)および学内共同利用施設(核磁気共鳴装置、電子顕微鏡等)の設備を利用する。現在の研究環境としては、モノ作り(タンパク質の生合成および化学合成)、精製(順相および逆相クロマトグラフィー)、溶液中での構造解析 (赤外分光および円二色性分光法による二次構造解析および多核多次元測定を750MHz NMRで行うことによる三次構造決定)、形態観測は完備している。 本年度は新規に設計リファインした1分子での会合体形成可能となるペプチド分子の候補をいくつか合成するとともに、機能リファインしたペプチド分子も合成精製していき、その構造と物性を上記物理化学的手法で観測するため、合成精製用のの試薬と観測用の器具を消耗品として多く計上した。
|