2011 Fiscal Year Research-status Report
品質指向ソフトウェア開発プロセスを支援する統計分析手法の開発と改善
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23510189
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
木村 光宏 法政大学, 理工学部, 教授 (20263486)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ソフトウェア信頼性 / ソフトウェア開発管理 / 統計的予測 / 構造方程式モデル / ソフトウェア品質 |
Research Abstract |
3年間という研究計画期間の初年度において,本申請研究の前段階から開始していた以下の研究について国際会議等で発表し,この研究の方向付け,指摘された問題点などについて検討を行った. 具体的には,以下のような背景と,研究の狙いを示す意味での研究発表を行った.それは,ソフトウェアの製造において計測可能な,いくつかの変量に基づいて出荷直前あるいはソフトウェアテストの開始前において当該ソフトウェアの品質や信頼性を予測するという統計数理モデルの開発であるが,その背景としてはとりもなおさず,組込系を含めた大規模なソフトウェアの開発と品質管理において,なんらかの有用な評価手法が求められていることにある. ここで述べているソフトウェアの製造において計測可能ないくつかの変量とは,たとえば,開発プロセスで得られる様々なドキュメントのサイズ(量),仕様変更の頻度や規模,レビューの実施結果と言ったような,あるソフトウェア開発プロジェクトの良し悪しに影響を与えているような変量を取り上げることとした.これらを用いて,従来の研究としては(非線形も含んだ)重回帰モデルによって,たとえば実際に発見されたソフトウェア欠陥の数(バグ数)が説明できるものとした研究が散見されたが,本研究では,それを進め,SEM(structure equation model; 構造方程式モデル)による予測方法を構成し,10を超える実際のプロジェクトからのデータに適用することによって,従来法との比較を,ソフトウェア欠陥数の推定精度の側面から行った. 結果は,いくつかのデータセットでの結果を除くと,良好なものであり,特にどの変数がどの中間変数に影響を及ぼしているかなどの,重回帰モデルでは表現できていなかった部分について推定・検討を加えることが可能になった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の計画部分については順調に推移している.SEM(構造方程式モデル)でうまく当てはまらなかったいくつかのデータセット(実ソフトウェアプロジェクトから抽出されたもの)について,モデルを改良する余地があるか,あるいはデータセットが偶然誤差による異常値を含んでおり,それに釣られる形で当てはまりが悪化したのかについては,次年度検討を行うこととした.モデル改良の側面からのアイディアとしては,GMDH(group method of data handling)などのような,データが生成される構造やメカニズムを一旦度外視することによって予測を行う方法は,試す価値があると思われる.本年度の後半はこの点について検討を加え始めている. また,極値分布に基づく数理モデルについてもソフトウェア信頼性評価手法の開発から派生的に考察の対象となり,それらについても研究発表を行った.これについても並行して次年度以降も行う予定としている.
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Strategy for Future Research Activity |
前項,【現在までの達成度】で述べた様に,すでにGMDHによる方法についてモデル化を行っており,予備的な実測データによる結果を得始めている.これらについて一旦まとめ,国内の研究会,また,このモデルの柔軟性を生かすため,他の種類の変量をもつソフトウェア製造プロセスから得られるデータに対しても適用し,どの程度の精度で,ソフトウェアがテスト段階においてソフトウェア欠陥を潜在させているかを推定する方法についてさらに研究を行う所存である. 一方,多変量の相関の概念を拡張した,コピュラ(copula)について,その概念とモデルの適用性,ソフトウェア信頼性評価法との関係についても検討したいと考えている.これについてはデータが大量に必要であるなどの困難さが指摘されている側面はあるが,ソフトウェア製造プロセスの評価についてコピュラが用いられた研究はなく,取り組む価値はあると考えている.なお,研究費における【次年度使用額】として,25271円が計上される結果となったが,これは当初予算額の残額であり,翌年度以降における特段の使途を目指したものではないことを付記する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
以上のことから,GMDHの適用可能性と結果の発表,当初の研究計画に述べた「柔らかい構造方程式モデル」の可能性の検討,コピュラについての初期研究のため,いくつかの国内外の研究会・国際会議へ出席し,知見を得るとともに研究についての批判を受けることとしたい.そのため,国内外の旅費に多くの費用を割きたいと考えている. 計算機資源等については,それほど重量のある計算を行う予定はないと考えられるため,高額な支出は避けるが,何がしかの計算機資源の手当てが必要になった場合は,コンピュータなどを購入することも検討する.
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