2012 Fiscal Year Research-status Report
エネルギー政策提案に資する安全な水素社会構築のための軽元素水素貯蔵材料開発
Project/Area Number |
23510196
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Research Institution | National Institute for Materials Science |
Principal Investigator |
片桐 昌彦 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (40354154)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 誠一 独立行政法人物質・材料研究機構, その他部局等, 研究員 (60354362)
浦島 邦子 文部科学省科学技術政策研究所, その他部局等, 研究員 (30371008)
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Keywords | 環境材料 / 水素利用 / 計算機シミュレーション / 陽極酸化 / 政策立案 / 分子動力学法 / 第一原理法 / アルミニウム |
Research Abstract |
アルミニウム水素化物AlH3は、高い密度で水素を含有するため、貯蔵材として最適である。本プロジェクト内の実験グループが、高温高圧下の直接反応でAlH3の合成に成功した。一方、アルミニウムの表面近傍で水素化が止まってしまう問題がある。水素の拡散を増大させることができれば、水素化を内部まで進行させることができると考えた。Alを厚い酸化物でコーティングし、AlとHの結合特性を変化させ、拡散を増大させることを提案した。理論的予測のみならず実験とコラボし、検証を行った。陽極酸化法によりアルミナ膜をAlにコーティングし、水素化実験を行った結果、より内部まで水素化された。これまで邪魔者とされてきた酸化物を積極的に利用する指針を提案した。ナノコンポジット材料やアルミ以外の材料にも応用し、実用材料を設計しすること提案する。また政策研を通じ、政策立案につながる提案を積極的に行った。 その他、本研究に関連し、他の水素貯蔵材料の検討も行った。水素吸蔵による構造変化の一例として、水素誘起アモルファス化の発現機構を解明し、弾性論的不安定化原因が動力学効果(揺らぎ効果)であることを主張した。分子動力学法からの指針として、これまで静的構造論から安定性が議論されがちであったが、構造安定性を理解するためには動力学的効果を考慮ことが必要であることを提案した。また、実験で得られる量として、水素圧力(P)-組成(C)-温度(T)の関係を表すPCT曲線があり、このプラトー領域の広さと温度範囲によって水素貯蔵量を知ることができる。RNi5(R=希土類)について、マクロな統計熱力学モデルからPCT曲線をモデル化した。更に希土類合金RNi5(R=希土類)について、第一原理によるフォノン計算を行い、動力学的特性を調べた。構造安定性を議論する上で、フォノン計算は有力な指針となることを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究が対象としたアルミ材料を利用した「水素貯蔵、輸送システム」の実用形態のイメージとしては、現在あるインフラを利用でき、通常の環境下で誰もが安全に取り扱うことが可能である。また長期的に使用可能で取り扱いやすい形状を持つ。他の材料に比べて、貯蔵量が遥かに多いことから、輸送にかかるコストも安価で済む。その実用化イメージ実現の際に要求される材料特性としては、自然環境に対して影響が少なくかつ容易に入手可能な材料であること。安価で取り扱い安いことも要求されることから、日常生活に多く利用されている材料であること。特殊装置や多くの製造過程を必要とせずに製造できること、などがある。本研究で提案したアルミ材は身近な材料であり、実用化されればメリットの大きい材料である。この意味で、研究に着手できたことは意義がある。現状のアルミ材料に存在する課題としては、高圧水素化した場合、水素化が表面で止まってしまうために、材料全体を貯蔵材料として利用できない。また、表面近傍で水素化物が生成されると、それ以上水素化が進展しない。更に酸化膜の除去が難しいため、逆に酸化膜を有効利用する手段の開発が必要である。また、現実的に利用可能な温度・圧力範囲で作動させること。劣化の問題をクリアする必要がある。そこで、水素貯蔵量向上を目指し、貯蔵メカニズムを追求するために、計算機シミュレーションと実験を並行して実施し、表面近傍で水素化が止まってしまう障害を克服した。またこれまで水素化の障害となっていた材料表面の酸化膜を逆に利用する。酸化膜をより厚くして、水素の拡散増大を起こさせ、より内部で核成長・核生成を推進させた。実用化の時期は、実験や企業とのコラボの進展状況に依存する。まだ達成したとは言えないが、今後期待されるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで行ってきたアルミニウム材料を利用した水素貯蔵性能を高める検討を行う。具体的には、陽極酸化手法を最適化し、水素透過として利用可能なナノホールの形状を変え、計算と実験を行う。また、高圧下でナノホールが壊れてしまう可能性があるので、これに水素吸蔵可能なPtなどの金属を充填し、構造補強を行い、更に水素透過性を高める試みを行う。更にアルミニウム内部での水素拡散をより大きくし、アルミニウム内部で水素化を起こすメカニズムを解明する。アルミニウムの水素化の最大の問題点は、アルミニウム表面で水素化が起き、反応が表面で止まることである。その結果、内部まで水素化が起きず、材料全体を貯蔵材料として利用できないことにある。水素拡散を増大できれば、内部で水素化を起こさせ、材料全体を貯蔵材料として利用可能となる。陽極酸化による酸化膜の膜厚や、ナノホールを調整することで、これを実現させる。また、より低い圧力で水素を貯蔵可能な軽元素材料の開を行う。現時点ではアルミニウムを検討しているが、他の軽元素についても検討を行い、軽元素貯蔵材の実用化に向けた検討を行う。アルミニウムで培った手法を他の軽元素に応用し、より優れた材料開発を行う。 また、これまでの成果を積極的に国際会議等で公表し、政策提案につながる提案を行う。政策研を通じ情報を発信し、水素利用に関する施策立案を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今後の計算および実験の推進のため、計算機資源の拡充と実験で必要な機材、消耗品を購入する。計算用のパソコン、通信機器、周辺機器、ソフトウエアなどをを購入する。また結果発表および政策立案のための国内・国際会議費、旅費に当てる。
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Research Products
(7 results)