2013 Fiscal Year Research-status Report
ユビキチン鎖連結パターンに着目した基質蛋白質の網羅的同定・分類
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23510233
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
太田 一寿 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (00322727)
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Keywords | ユビキチン / 出芽酵母 / プロテオミクス |
Research Abstract |
蛋白質のユビキチン化修飾では、修飾される事自体に加えて、その修飾様式、すなわちユビキチン鎖の特性が基質蛋白質の運命決定に重要な意味を持つ。そこで私は独自に開発したポリユビキチン化基質蛋白質の効果的濃縮・同定法(PAP-MS)と蛋白質の系統的絶対定量解析法(PCS-MS)を用いてユビキチン鎖の連結パターンに基づく基質蛋白質の網羅的解析と詳細な定量解析を行うことを目的とし、研究期間内の到達目標として以下の3項目を掲げた。 1)7種類のmono-K Ubを用いて出芽酵母のPAP-MS解析を行い、連結パターン毎の基質候補リストを作成する。それぞれの代表的な基質に対してはPCS-MSによる確認作業を行う。 2)外的刺激時(プロテアソーム阻害薬添加、セリンプロテアーゼ阻害剤添加、DNA障害、熱刺激時)において、1)と同様の解析を行う。 3)上記データから各連結パターンの持つ意義を考察し、遺伝学的・生化学的手法により証明する。 本年度の実績として、A)同一ユビキチン分子上に二か所以上の連結部位を持つような非典型連結パターンを示すユビキチン鎖の解析、B)ユビキチン自体がアセチル化・リン酸化などの翻訳後修飾を受けた場合のユビキチン鎖伸長パターンの解析、を行ってきた。 A)に関して、傍証レベルのデータは十分に蓄積できているのだが、より直接的データが必要との判断の元、質量分析器などを用いた証明実験に取り組んでいる。B)に関して、リジン残基のアセチル化を模倣した変異をユビキチン分子に導入し、分岐パターン別鎖形成能などを評価した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
代表的な連結部位であるLys48とLys63に関しては現行法のPAPである程度のユビキチン鎖が得られ、MS解析まで行えたが、その他の連結部位に関しては十分な収量が期待できない状況である。脱ユビキチン化酵素欠損変異体の利用・ユビキチン発現誘導系の変更など様々な工夫をしているが今のところ目覚ましい改善はみられていない。 昨年度に引き続き、本申請の派生テーマである非典型連結パターンをもつユビキチン鎖の解析とユビキチン分子自体の翻訳後修飾の探索に労力を割いてしまったが、本申請の完遂に必要な作業だと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
1)非典型連結パターンユビキチン鎖問題に決着をつける。 2)外的刺激時(プロテアソーム阻害薬添加、セリンプロテアーゼ阻害剤添加、DNA障害、熱刺激時)に特異的に蓄積するユビキチン化基質タンパク質を連結パターン毎にリストアップする。 3)Lys48とLys63以外の連結ポイントに関しては、収量を増加させる工夫を引き続き行っていく。 4)ユビキチン分子自体の翻訳後修飾の探索と鎖形成に与える影響を評価する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本申請は1)小規模実験による条件検討、2)最適条件下での大規模実験によるデータ収集、3)得られたデータの解析、といった流れで進められおり、最終的なアウトプットの質に対するステップ1)の寄与が大きい。多額の次年度使用額が生じてしまったのは、このステップ1)に多くの時間を費やしてしまい、想定期間内に費用面で最も大きな比重を占めるステップ2)に進めなかったのが主因である。 上記ステップ1)を終了し、速やかに2)、3)へと取り掛かる。 質量分析器を用いた定量解析が中心となるため、大量の安定同位体標識アミノ酸が必要となり、その購入費用が研究費の大部分を占める予定である。
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