2011 Fiscal Year Research-status Report
ため池生態系の保全と復元のための高精度調査に基づく淡水魚の「保全単位マップ」作成
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23510292
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
向井 貴彦 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (80377697)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 絶滅危惧種 / ミトコンドリアDNA / 集団構造 / メタ個体群 / ため池 |
Research Abstract |
今年度は,絶滅危惧種であるウシモツゴの地域集団間の高精度な系統地理解析のために,ミトコンドリアDNAの全塩基配列決定を行った.これまでに関市と犬山市産から一個体ずつ決定し,いずれも16611塩基対であった.既知の文献で用いられた730塩基対の部分塩基配列では,両ハプロタイプ間で2カ所のSNPsしか見られなかったが,mtDNA全塩基配列で比較すると64カ所のSNPsが見られたため,遺伝子系図の推定に十分な情報量であることが明らかになった.ウシモツゴ以外の魚種については,カワバタモロコ,デメモロコ,トウカイヨシノボリについて標本を収集し,ミトコンドリアDNAの部分塩基配列による予備的な集団構造の解析をおこなった.ウシモツゴは中山間地域において各ため池の集団間でハプロタイプが異なるが,他の魚種においても濃尾平野の集団は比較的均一である傾向にあるものの,中山間地で集団間のハプロタイプが異なる傾向にあった.このことは,中山間地のため池における集団間のハプロタイプの異同が,メタ個体群の近年の人為的断片化によるものではなく,中山間地で本来生じていた集団分化によるものであるという可能性を示している.各魚種の分布調査は,岐阜市を中心におこなった.岐阜市内のため池台帳に記載されているため池47地点中40地点の魚類相を調査し,周辺市町村においても任意に地点を選定して調査した.その結果,市街化が進みつつある岐阜市におけるこれらの魚種の生息地は極めて限られており,各生息地の保全を早急に検討する必要があることがあらためて示された.水系内の移動行動や生活史については,デメモロコについて調査を開始した.関市のウシモツゴについてもNPO法人ふるさと自然再生研究会による人工水路での移動行動の実験と協働を開始した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主な対象種であるウシモツゴのミトコンドリアDNA全塩基配列の解析を開始し,他の希少種を含めた野外での分布調査,生態調査についても予定通り開始することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
ウシモツゴのミトコンドリアDNA全塩基配列の解析を進める.他の希少魚種についても,ミトコンドリアDNAの解析をもとに集団構造を推定し,それぞれの分布調査と野外での移動生態の調査をおこなう.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
初年度に行った予備的な調査や実験の結果をもとに,多くのサンプルを対象にした遺伝子解析と,野外調査をおこなうため,必要な調査機材や消耗品などの購入に充てる.
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Research Products
(4 results)