2012 Fiscal Year Research-status Report
ため池生態系の保全と復元のための高精度調査に基づく淡水魚の「保全単位マップ」作成
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23510292
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
向井 貴彦 岐阜大学, 地域科学部, 准教授 (80377697)
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Keywords | 絶滅危惧種 / ミトコンドリアDNA / 集団構造 / メタ個体群 / ため池 |
Research Abstract |
今年度は,ウシモツゴ以外の希少魚種として主にデメモロコ(環境省レッドリスト絶滅危惧II類,岐阜県レッドリスト絶滅危惧I類)とトウカイヨシノボリ(環境省及び岐阜県レッドリスト準絶滅危惧)の分布と遺伝的集団構造,生活史と河川内での移動行動についての研究を行った. デメモロコについては,岐阜市内の河川を中心に分布調査を行い,岐阜市では一部地域にのみ生息することが明らかとなった.本種は琵琶湖水系の個体群との間に遺伝的分化が見られるが,今年度の調査で岐阜県岐阜市,養老町,南濃町,愛知県三河地方の4地域で採集した199個体のmtDNA部分塩基配列(ND5遺伝子約1kbp)を比較した結果,同じハプロタイプが全ての地域に分布しており,遺伝的分化が見られなかった.また,岐阜市の生息地で毎月採集を行い,生活史を調査した結果,河川の深場で越冬し,春から夏に水路に遡上して産卵することが明らかになった.岐阜市内全域で約300地点の魚類調査をおこなっているが,デメモロコの分布が確認できる範囲は長良川支流の一部(約2km×2kmの範囲)に限られているため,その範囲内で生活史が完結していると考えられた. トウカイヨシノボリについては,分布域全体(岐阜県・三重県・愛知県)での遺伝的集団構造を調査した.29地点134個体のmtDNAの部分塩基配列(ND5遺伝子約1kbp)を解析した結果,地理的な3つのクレードに分けることができた.本種はウシモツゴと同様に濃尾平野周辺の丘陵地のため池に分布しており,mtDNAの部分塩基配列の系統地理的パターンも似ていたことから,同様の地理的集団構造を持つことが示唆された. 他の希少魚種として,イチモンジタナゴとシロヒレタビラの分布調査とmtDNAの解析もおこなったが,この2種は琵琶湖由来の外来個体群か,あるいは外来個体による遺伝的撹乱を受けた個体群しか見つからなかった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ウシモツゴの遺伝的解析の進展は遅れているものの,比較のための他魚種の分布調査,遺伝的解析,生態調査は当初の計画通り順調に進行している.また,成果の公表も適宜おこなうことができた.
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Strategy for Future Research Activity |
ウシモツゴのミトコンドリアDNA全塩基配列の解析を進める.トウカイヨシノボリとデメモロコの解析結果は論文としてとりまとめる.これらの希少魚種の分布情報,遺伝的集団構造をもとに,過去の地形変化や土地利用の変遷の情報と合わせた比較を行うことで,これらの希少魚種の本来の移動可能範囲と集団構造を推定し,保全単位の空間配置を記した「保全単位マップ」を作成する.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遺伝子解析と野外調査の補足をおこなうために調査機材や消耗品の購入にあてる.また,調査補助などの謝金,成果公表のための印刷費や旅費にも使用する.
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Research Products
(11 results)