2013 Fiscal Year Annual Research Report
温暖化が里山の昆虫類の生物多様性の低下に及ぼす影響に関する研究
Project/Area Number |
23510297
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Research Institution | Osaka Prefecture University |
Principal Investigator |
石井 実 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 教授 (80176148)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平井 規央 大阪府立大学, 生命環境科学研究科(系), 准教授 (70305655)
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Keywords | 気候温暖化 / 里山 / 生物多様性 / ギフチョウ / 休眠 |
Research Abstract |
気候条件の異なる場所でのギフチョウの蛹の生存率を明らかにするために、2012年の室内飼育で得られた蛹を7月下旬から2013年の4月上旬まで、大阪府内の標高の異なる3地点(A;約930m,B;約430m,C;約4m)の地表と地上1m付近に置き、羽化率を比較した(野外実験)。その結果、標高の異なる3地点の地表と地上1mのいずれでも成虫の羽化が見られた。羽化率は地点Cの地上1mで58%と低かったが、それ以外では75~92%と高率であった。各設置場所の気温変化を比較したところ、地点Cの地上1mでは11~12月の最高気温が15℃を超える日が多いことがわかった。これは本研究の飼育実験で既に明らかにした長い秋の条件に相当し、これが高い死亡率の要因と考えられる。 2013年は、近年、衰退の著しい大阪府北部のギフチョウの産地(調査地M)において、本種の生息状況調査および下層植生調査を実施した。また、前年度得られた蛹より羽化した成虫を人工交配し、卵の孵化率や蛹化率などを調べた。その結果、調査地Mにおける卵調査では約14000枚の食草(ミヤコアオイ)の葉を調べても卵塊を発見できなかった。人工交配実験では6個体の雌成虫から合計1,045卵を得たが、孵化率は43~97%で平均69%と低かった。一方、蛹化率(幼虫期の生存率)については97%と高い値を示した。下層植生調査では、調査地Mでは29種が確認されたのに対して、数年前から記録が途絶えている近隣の産地(調査地Y)では14種と少なく、ニホンジカによる過剰採食が推定された。これらの結果から、調査地Mでは何らかの原因で本種の急激な衰退が進行し、近交弱勢による孵化率の低下も懸念されることが明らかになった。また、本種の衰退にはニホンジカによる食草群落を含む下層食草への採食圧が関係していることが示唆された。
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Research Products
(21 results)