2011 Fiscal Year Research-status Report
カワウによる森林衰退に対する伝統的保全管理技術の効果と検証
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23510301
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Research Institution | Lake Biwa Museum |
Principal Investigator |
亀田 佳代子 (小川 佳代子) 滋賀県立琵琶湖博物館, 研究部, 専門学芸員 (90344340)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
前迫 ゆり 大阪産業大学, 人間環境学部, 教授 (90208546)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 環境 / 生態系修復・整備 / 生態学 / 民俗学 / 鳥獣害 / 森林保全 / 伝統的技術 / 野外実験 |
Research Abstract |
平成23年度は、本格的な調査および実験に向けて、伝統的森林保全管理技術の詳細把握、伝統的森林保全管理の年代と範囲の特定のための写真および文献調査、糞採取技術の定量化実験のための資料収集を行った。さらに、これまでの結果をまとめ、研究成果の公表も行った。以下にその概要を示す。 カワウの糞採取に関する伝統的森林保全管理技術については、地元の採糞経験者に聞き取り調査を行うとともに、糞採取の道具を借用し、写真撮影や各部位の測定を行った。この結果と既存文献の情報を組み合わせ、採取した糞の量や、糞採取のために撒いた砂の量などの推定を行った。 写真や文献については、地元の美浜町や上野間区が保管する資料の調査を行い、可能なものについては借用、複写を行った。また、入手済みの資料については、資料整理補助員を雇用して整理を行った。 糞採取の定量化実験については、その準備として聞き取り調査や既存文献から糞採取の定量的把握を試みた。また、最新の論文なども含めて、大学や図書館などから具体的な方法や手順について参考となる資料を入手し、実験計画の検討を行った。また、現地の状況や調査方法に詳しい研究者の協力を得て、カワウの繁殖状況の把握や実験候補地の検討を行った。 研究成果の公表としては、研究代表者が所属する滋賀県立琵琶湖博物館において開催された、第19回企画展示「こまった! カワウ―生きものとのつきあい方―」(2011年7月16日(土)~11月23日(水・祝))において、研究成果の一部を公表した。また、3月に龍谷大学瀬田キャンパスにて行われた第5回東アジア生態学会連合大会において、鵜の山での糞採取の定量化と糞採取終了後の森林遷移過程についてポスター発表を行った。さらに、カワウによる森林衰退被害地において森林遷移の妨げとなることが懸念される外来種の侵入について、論文を公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では、伝統的森林保全管理技術を定量的に把握するため、平成23年度中に実験を開始する予定であった。実験に必要な情報についてはある程度入手することができ、現地でのカワウの繁殖状況も把握することができたが、情報の収集および整理と、実験計画の検討を兼ねた成果発表の準備に、想定以上の時間と労力を要した。そのため、カワウの繁殖に合わせた適切な時期に、実験を実施することができなかった。また、空中写真判読と植生調査については、定性的な結果は得られたものの、詳細な分析はできなかった。最終的な目標である「カワウによる森林衰退被害地での対策に活用可能な森林遷移促進モデルの構築」のため、森林衰退被害地における外来種の侵入についての論文の公表を優先したのが、分析が十分にできなかった理由である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度に実施できなかった定量化実験および現地植生調査については、平成24年度の調査計画の中に組み込んで実施する。定量化実験については、当初平成24年度に予定していた「コロニーでの糞採取実験と市販の有機肥料(グアノ)を用いた施肥実験」と同時にデータを収集し、実験の状況や結果を見ながら実験手法や計画の改善を行う。現地植生調査については、平成24年度に実施する予定である。 これらの計画も踏まえ、平成24年度全体としては、(1)糞採取の定量化を含むコロニーでの糞採取実験と市販の有機肥料(グアノ)を用いた施肥実験の実施、(2)空中写真判読と現地植生調査による、糞採取とクロマツ植栽の長期的な森林遷移促進効果の検証、(3)伝統的森林保全管理の年代と範囲の特定および地図化、を実施する。また、必要に応じて研究会を実施し、データの共有と結果の検討を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度に予定していた定量化実験および現地植生調査が進まなかったため、その分に見込んでいた旅費と調査分析補助員の人件費が、次年度使用額として残っている。「今後の研究の推進方策」に書いた通り、2年分の実験と調査を平成24年度に実施し、データを得る必要があることから、平成23年度分からの旅費および人件費については、平成24年度予算にそのまま上乗せして使用する予定である。 全体としては、実験および分析に必要な消耗品費、現地調査と実験のための旅費と人件費、その他費用として、GISソフトのアップデートや保守サービス費用、資料のコピー代、論文別刷代などに予算を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)