2012 Fiscal Year Research-status Report
中国福建省の対外開放と対台湾工作をめぐる中央地方関係の分析
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23510319
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
下野 寿子 北九州市立大学, 外国語学部, 准教授 (40294607)
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Keywords | 福建省 / 台湾工作 / 中央地方関係 / 厦門 / 平潭 / 海峡西岸経済区 / 三通 / 台商 |
Research Abstract |
平成24年度の研究実績概要は以下の通りである。 1.現地視察・インタビューに関して、4月から9月まで上海を拠点に研究活動を行い、特に大陸の中国人研究者との意見交換を活発に行った。上海では、復旦大学・上海国際問題研究院を中心に台湾問題研究者と意見交換し、中国国内での台湾研究の概要・両岸問題の取り扱い状況・福建省に関する研究の状況などを聴取した。また、福建省では、福州市(国家プロジェクトである平潭総合実験区を含む)・厦門市及びそれらの近郊とインフラ整備の状況などを視察し、福建省社会科学院・厦門大学・厦門市台湾弁公室など現地での聞き取りを行った。現地の档案館も訪問したが、こちらは見るべき成果をあげることができなかった。また、文献資料の補足調査を香港中文大学で行った。 2.平成24年度の当初の目的の一つであった、中台対立時の記録や軍事的な側面を立証する資料はほとんど入手出来なかった。この点については、和文・英文の歴史的観点からの先行研究を利用して、一定程度明らかにする必要がある。該当文献のいくつかは年度末に収集できたので、25年度の研究作業に加えたい。一方で、諸文献より、対台工作が大きく動き始めたのは1980年代以降であったことは明らかであり、本研究の焦点も直近の両岸経済関係まで見据えたものへと微修正しながら作業を進めた(当初の研究計画では直近まで含めていなかったが、研究着手後の状況に応じてタイムスパンを拡大した)。 3.両岸の実質的な直接交流開始から今日までの、経済的な諸政策やプロジェクトについて、多くの資料を閲覧・入手した。これらに関連する現地での聞き取り調査も有益であった。但し、大陸での調査結果については随所に政治的な宣伝が見受けられたため、台北のシンクタンクで聞き取りを行って対台工作の現状把握に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
評価の理由は、研究成果の公表が予定通りに進まなかったことにある。その理由は、①4月から9月までの中国滞在と、10月以降の公務の集中により、10月~翌年3月までに研究報告・論文公表を行うことが困難であった。②英語論文の公刊が出版側(海外)の事情で無期延期となり、年度内に本研究課題に関する論文を公表できなかった。③上海滞在中に3本の論文を発表したが、何れも本研究課題とは関連しなかった。 遅れを取り戻す対策として、上記②の英語論文について、既に原稿は完成した状態にあるので、平成25年度の出来るだけ早い時期に公表する。また、エフォートの配分を見直して平成25年度は本研究課題に集中し、これまでの情報収集・踏査の結果に基づく研究成果の公表を急ぐ。 なお、研究に関わる調査については比較的順調に進んでいる。①当初想定していた改革開放以前の資料の入手はあまり進んでいないが、歴史的観点から中台関係を分析した文献のうち、最新の研究を利用して補いたい。②現地での長期滞在(および受け入れ先の協力)を生かして政府系シンクタンク・台湾弁公室などに接触できたことは、当初思いつかなかった新たな考察をもたらしてくれた。福建省での聞き取りを生かして、現実に即した理論的考察を進めたい。③中台間の交流が活発化した後の資料はかなり蓄積できたため、これらを整理・分析する作業に取り組みたい。
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Strategy for Future Research Activity |
1.引き続き地方紙の閲覧、現地でのインタビュー、資料収集を行い、経済的な対台工作と中台統一という政治的目的との関連性をさらに追及する。 2.平成25年6月末にアジア市場経済学会での研究成果報告を予定している(学会承認済み)。既に完成済みの英語論文については、平成25年度内に公刊の目途がついている。この他、研究会・学会での成果報告を積極的に行いたい。 3.大陸で収集した情報・資料の精査に関して、必要に応じて台湾で関係者にインタビューを行う。 4.これまで地方から中央の政策を検討してきたが、今後は、現在の対台工作において中央が福建省をどのように位置づけているのかを確認しながら作業を進める。 5.本研究の総括を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度は、本務校の長期出張により、4月~9月まで上海に滞在した。この期間に本研究課題の調査対象地である福建省へ複数回出張したため、交通費が当初の計画より安価となった。また、本務校の規定により、これらの出張に関わる宿泊費が支出されなかった(自費負担)ため、次年度使用額が発生することになった。 これまでの調査から得られた成果より、海西海峡経済区・平潭総合実験区・両岸の各種フォーラムの福建省での実施など、新たに検討すべき課題も出てきたため、次年度使用額を充てて追加の踏査・資料収集を行いたい。
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Research Products
(2 results)