2013 Fiscal Year Annual Research Report
中国福建省の対外開放と対台湾工作をめぐる中央地方関係の分析
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23510319
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Research Institution | The University of Kitakyushu |
Principal Investigator |
下野 寿子 北九州市立大学, 外国語学部, 教授 (40294607)
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Keywords | 中国 / 福建 / 台湾政策 / 両岸関係 / 台湾同胞 / 台商 / 厦門 / 中央地方関係 |
Research Abstract |
平成25年度は、福建省政府の中央政府に対する働きかけや、地方政府と地域社会との関係(特に両者の相違点)に注意しながら文献調査と現地調査を行った。その研究成果と知見は以下の通りである。 1.福建省の対台工作を検討する上で最も重要な理論的枠組みは中央地方関係である。地方政府にとって中台政治関係は外部要因と位置づけられる。各級地方政府は中央の対台工作の指導に従ってそれぞれの管轄地域で台湾との経済協力を行う。しかしながら、地方政府は、管轄地域の経済振興策を対台工作の一環と位置づけることで、中央政府による政策支援を期待することができる。近年、福建省が中心となって進めている地方レベルの両岸経済協力(海峡西岸経済区、両岸フォーラム、地方都市に設置された台湾街など)は、概ね省内の各級地方政府による地域開発プログラムの一環であり、地元の経済振興以上の関心はあまりみられない。 2.福建省と縁が深いといわれてきた台湾との関係について、華僑政策との比較から検討した。厦門・福州での調査から、台湾同胞への対応や親近感において政府と地域社会との間に相違が観察された。 3.「家」の概念を台湾同胞に適用しようとする共産党政権の対台工作方針を検討し、天下・国家・家の概念を整理した。但し、「家」の概念と近代国家システムとの関係や、福建省の対台工作で「家」という概念がどのように利用されてきたのかについては今後整理する必要がある。 4.両岸農業協力について文献調査を行い、文献から得た知見の確認と疑問点について意見交換するために福州で専門家と面談した。現地紙の報道は農業協力の進展を強調する傾向があったが、現地の複数の研究者は台湾農産品優遇への不満や台湾農民創業園の問題などの現状を紹介してくれた。 以上より、中央と福建省は、台湾工作に対する関心・認識・取り組みにおいて常に一致しているわけではないと結論づけた。
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Research Products
(4 results)