2011 Fiscal Year Research-status Report
在日ビルマ人ネットワーク形成をめぐる複合的研究―歴史的背景と日韓の実態比較
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23510324
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Research Institution | Sophia University |
Principal Investigator |
根本 敬 上智大学, 外国語学部, 教授 (90228289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宣 元錫 大阪経済法科大学, アジア太平洋センター, 研究員 (10466906)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 在日ビルマ人 / 在韓ビルマ人 / ビルマ難民・移民 / 難民・移民政策 / 移民ネットワーク |
Research Abstract |
研究代表者の根本は英国で文献調査をおこない、おもに大英図書館に所蔵されている旧インド省公文書コレクションにあたって、1920年代から40年代初期にかけて英領植民地のビルマから英本国ないしは他国へ向かったビルマ人に関する渡航記録(パスポート発行状況)などを確認した。また、国立公文書館(TNA,旧PRO)に行き、1948年の独立以降、数年間にわたるビルマから英国への渡航を希望した主に英系ビルマ人へのパスポート発行状況に関する記録を読み込んだ。これは海外へのビルマ移民の歴史的背景を知る一環としての作業である。 一方、研究分担者の宣は研究協力者の梶村美紀(東京大学大学院博士後期課程)と一緒に、日本国内に住むビルマ人(特に難民ないしはそれに準ずる資格を有して政治活動をおこなっている者)への聞き取りをおこなった。少数民族団体を含むビルマ人の主要政治団体関係者と会い、難民となった背景、これまでの活動経緯、日本での生活状況と問題点、今後の展望などを語ってもらい、そのうえで彼らが経験した日本の難民政策の「現場における実態」に関する事実確認もおこなった。また、この宣と梶村は韓国とタイにも行き、韓国では富川外国人労働者の家に集まるビルマ人活動家と会って、韓国に移動した経緯、韓国内でのネットワーク形成状況、韓国側市民団体との交流の実態などに関する聞き取りをおこなった。 続いて両名はタイに行き、チェンマイとメソートにおいて民主化活動を展開するビルマ人諸団体(少数民族団体を含む)の幹部級メンバーと会い、これまでの経緯、タイでの活動の特徴と問題点、タイ政府側のビルマ難民やビルマ人政治活動家に対する姿勢などについて詳細な聞き取りをおこなった。 年度末に研究代表者が務める大学のいて研究情報交換の場を設定し、これまでの調査の暫定的なまとめをおこない、次年度に向けた課題を相互に確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一年度目としての目的は大体において達成したといえる。本研究の主目的は在日ビルマ人ネットワーク形成をめぐる研究であるが、主に日本と韓国に住むビルマ人コミュニティの比較考察が中心となっている。そのため、初年度から日本国内と韓国に住むビルマ人への聞き取りを中心に調査を進め、比較の幅を広げるべく、タイでの聞き取りもおこなった。さらに歴史的背景に留意すべく、ビルマの旧宗主国である英国がビルマにおける植民地統治においてビルマ人の海外移動をどのように管理したかに関する文書資料に基づく調査もおこなった。 聞き取りは質量ともに十分な成果を収めたといえるが、その記録をどのようにまとめどのような方法で残すかという課題が残された。また、韓国政府およびタイ政府それぞれの移民や難民受け入れに関する公文書の調査が不十分であった。これらは2年度目以降の課題として取り組むことになる。
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Strategy for Future Research Activity |
2年度目は引き続き日本国内に住むビルマ人への聞き取りを進め、必要に応じ、同じ人物に再度の聞き取りをおこなう予定である。これらは研究分担者の宣と研究協力者の梶村が中心となって担当する。両名はまた、韓国とタイに行き、前年度に行った聞き取りの続きに取り組み、ここでも必要に応じ、同じ人物に再度の聞き取りを行うことを考えている。また両国政府それぞれの移民や難民受け入れに関する公文書の調査も、可能な範囲でおこなうつもりである。 研究代表者の根本は、比較の対象を広げるべく、オーストラリアに行き、シドニーとメルボルンに存在するビルマ人コミュニティとそれぞれ接触し、少数民族を含む主要団体の幹部らと会い、同地でのビルマ人コミュニティの形成に至る経緯(歴史)をはじめ、生活の実情、政治活動の特徴や課題に関して聞き取りを実施する予定である。その際、オーストラリア政府側の移民・難民政策に関する文書資料の入手にも努力する。 年度末には初年度同様、研究代表者の属する大学で研究情報交換の場を設け、各人の調査内容を報告し、相互に意見交換をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2年度目も主要支出は海外出張旅費になる。韓国、タイにそれぞれ1回ずつ2名(研究分担者と研究協力者)、オーストラリアに1名(研究代表者)が出張し、各々現地で2週間ほど聞き取りに従事することになる。 また聞き取り相手に対する謝金支出も引き続き必要となる。謝金を必要としない聞き取り相手もいるので、全員に支払うわけではないが、貴重な時間を割いて協力していただくわけなので、誠意を示す一環として必要な範囲で支払うことを考えている。関連書籍の購入についても、確定はしていないが、おこなうつもりである。
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Research Products
(3 results)