2012 Fiscal Year Research-status Report
ノモンハン事件をめぐる中ソ、中モ関係についての研究
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23510325
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
ボルジギン 呼斯勒 東京大学, 総合文化研究科, 学術研究員 (40600193)
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Keywords | ノモンハン事件 / 国際関係 / 東アジア / ハルハ河戦争 / 軍事史 |
Research Abstract |
本研究は、ハルハ河・ノモンハン戦争(ノモンハン事件)をめぐる中ソ、中モ交渉の真相を明らかにすることを目的とする。2012年度は、研究代表者が研究目的に沿って、モンゴル、中国、台湾の研究者の協力をえて、モンゴル外務省中央図書館、モンゴル人民軍文書館他、台湾の国家図書館、国史館他、中国のフルンボイル市文書館などの諸文書館、図書館で資料を収集したほか、モンゴル国領内のアダグ・ドラーン、ノムログ、中国領内のノモンハーニー・ブルド・オボー、アルシャン(阿爾山)、アサル・スム、トンベン・ホーライなどノモンハンの戦場に調査をおこなった。また、アルタンサン(99才)等3名のモンゴル国と中国・内モンゴルの参戦者に聞き取り調査をした。さらに、2012年11月7日にモンゴル防衛大学と共同でウランバートルで国際シンポジウム「ハルハ河(ノモンハン)戦争の歴史:新資料と新研究」を実施した。 これらの現地調査によって、ノモンハン戦争をめぐる、当時の中華民国政府の、ソ連、イギリス、ドイツ、アメリカとの交渉の状況を知ることができた。また、モンゴル軍に監禁された100名あまりの日本人捕虜のリストと、ソ連から中国国民党政権に引き渡された満洲国軍の36名の捕虜の行方が判明した。そのうえで、論文「ノモンハン戦争をめぐる中ソ交渉の新資料と研究の新成果」を執筆し、国際シンポジウム「ハルハ河(ノモンハン)戦争の歴史:新資料と新研究」で発表した。さらに、論文「ノモンハン戦争における中国の対ソ、対日諜報活動」を執筆し、学術雑誌に投稿中である。主に中ソ、中モ、中独交渉を焦点に、ノモンハン戦争をめぐる国際関係について考察し、同戦争における中国の対ソ、対日諜報活動や、当時の中国、ドイツ政府の同戦争に対する立場とその対応などが明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モンゴル、中国、台湾の研究者の協力をえて、2012年度には、関係諸国での調査を順調にすすめることができた。収集した資料のなかで注目すべきは、ハルハ河・ノモンハン戦争における中国とドイツなど当事国以外の国の間の交渉や、中国の対ソ、対日諜報活動、および日本軍、満洲国軍の捕虜の行方である。これらの資料については従来ほとんど知られておらず、ハルハ河・ノモンハン戦争中に、予想されるドイツと不可侵条約をむすぶことの意義に対して、ソ連、ドイツだけではなく、中国側も深刻な認識を持っていたことをうかがわせる。これらに基づいて、研究代表者は「ノモンハン戦争における中国の対ソ、対日諜報活動」等2本の論文を執筆することができ、ハルハ河・ノモンハン戦争をめぐる中国とソ連、ドイツ、モンゴルなどの国との交渉の真相が明らかになりつつある。ハルハ河・ノモンハン戦争の遠因、および極東地域の利益をめぐる多国間の複雑な力関係の本質に到達するには、あと一歩の時間と調査が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度には、モンゴル、ロシア、中国で最終調査を実施し、ロシア、モンゴル、中国の研究者と意見を交換する。そのうえで、総合的に分析をおこない、論文「極東地域をめぐる日・ソ・中・モ戦略」「ノモンハン戦争における日本、満洲国、モンゴル、ソ連のプロパガンダ」などを執筆し、ソ連の対日本、対ドイツ戦略において、モンゴルと中国は、どのように位置付けられていたのか、それは、ハルハ河・ノモンハン戦争でどのように反映されたのかなどについて分析し、ノモンハン戦争をめぐる北東アジア社会の力関係の原点、同戦争が北東アジア地域史に占める位置、およびその帰結を体系的に検討し、それが後の世界秩序の形成に及ぼした影響を検証する。 さらに、日本、モンゴル、ロシア、中国の研究者を招いて、国際シンポジウム「ハルハ河・ノモンハン戦争をめぐる国際情勢」を開催し、得られた成果を取りまとめ、発表する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ノモンハン戦争関連、国際関係史、軍事史関係の図書、貴重資料、写真のコピーなど130,000円。ノモンハン戦争戦場遺跡アルバム作成費100,000円。 モンゴル、中国での現地調査などのための海外旅費、日本国内の資料調査、学会参加のための国内旅費230,000円。 日本、モンゴル、ロシアの研究協力者(専門知識の提供、共同調査、資料翻訳)の人件費・謝金など100,000円。 国際シンポジウムの開催費(会場費、プログラム印刷費、茶菓子代、文房具など)40,272円。
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