2013 Fiscal Year Research-status Report
パキスタン農村における土地所有と権力のダイナミクスに関する研究
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23510334
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
小田 尚也 立命館大学, 政策科学部, 教授 (30436662)
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Keywords | パキスタン / 土地所有 / 政治権力 |
Research Abstract |
2013年度は2013年5月に実施された下院議会選挙結果をもとにパンジャーブ州における政治変化の分析を行った。パンジャーブ州は小選挙区下院議席272席のうち(下院総議席数は342席。各政党は小選挙区での得票に比例して女性留保議席(60席)および非ムスリム議席(10席)が与えられる)、148席を占めるパキスタン政治において最大の州である。下院全体の結果はパキスタン・ムスリム連盟ナワーズ派(PML-N)が185議席と過半数以上を獲得し政権の座につき、選挙前与党であったパキスタン人民党議員派(PPPP)は2008年の125議席から41議席と大幅に後退し、第2党に転落した。2008年と2013年のパンジャーブ州小選挙区における選挙結果を分析すると2008年の議席を2013年の選挙においても維持できた政党の選挙区および候補者が政党の鞍替えをして当選した選挙区は148選挙区中69区と46.6%(内訳:同一政党53選挙区、同一人物別政党16選挙区)と高い流動性が再確認された。2002年と2008年の下院議会選挙小選挙区データからラホール等の大都市圏を除くパンジャーブ州農村部における同比率は61%であった。これらの結果から2002年と2008年の下院議会選挙の比較で指摘したようにパンジャーブ州政治においては独占的な力が一方的に権力を握っているということは考えにくいと言える。また前回選挙では与党パキスタン・ムスリム連盟カイデアーザム派(PML-Q)からPPPPへ、今回の選挙ではPPPPからPML-Nへと政権交代が起こっている。前者はムシャラフ軍事政権から民主化の流れ、後者はPPPP政権への失望が背景にあり、これらの選挙結果は想定されていたものである。このように世論が概ね選挙結果に繋がっていることから、国政レベルにおいては民主的な選挙プロセスが根付きつつあることが指摘できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
予定したパンジャーブ州の農村における家計および政治意識調査に遅れが発生しているためである。これは調査内容に政治家の資産内容や土地所有の状況といったセンシティブな質問項目が含まれていたため、調査方法や質問内容の修正、調査機関との再調整の必要が生じたことに起因する。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度は以下を計画している。 1.農村調査の実施により、2002年、2008年、そして2013年の3回の下院議会および地方議会選挙データから得られる定量的なデータに定性的な分析を加味する。 2.調査での成果を海外のワークショップで発表。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定したパンジャーブ州農村における家計および政治意識調査に遅れが発生しているためである。これは調査内容に政治家の資産内容や土地所有の状況といったセンシティブな質問項目が含まれていたため、調査方法や質問内容の修正、調査機関との再調整の必要が生じたことで当初の想定より調査実施準備に時間を要したことに起因する。また成果の発表予定であった海外ワークショップが2014年開催となりこれに予定していた経費も未使用となったため。 実施が遅れている農村調査費およびこれに関連する現地調査費、また海外でのワークショップ/セミナーへの参加費用に使用する。
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Research Products
(3 results)