2011 Fiscal Year Research-status Report
経済インフラの社会ジェンダー分析 貧困削減と食糧の安全保障へ向けて
Project/Area Number |
23510341
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田中 由美子 東京大学, 社会科学研究所, 講師 (60571221)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | タンザニア / 灌漑圃場整備 / ジェンダー / 水利組合 / ソーシャルキャピタル / 生計戦略 / 土地所有 / キリマンジャロ |
Research Abstract |
今年度は、タンザニア国キリマンジャロ州にあるLower Moshi灌漑地区(LMIS)及びNdungu灌漑地区に焦点を当て、1980年代に実施された国家主導の近代的灌漑圃場整備計画がどのように農村社会のジェンダー役割や規範に変化をもたらしたのかについて予備調査を行った。現地調査は、2011年11~12月に約3週間実施し、研究機関、管轄県庁、灌漑事務所、水利組合、村役場、灌漑地区内の農民男女16名の面談調査を行った。その結果、LMISにおける換地では従前地の約20%の減少、従前地において土地を所有していた女性はそのまま債権者となったが少数であること、換地計画では女性の土地所有権を改善する対策は取られなかったことが判明した。LMISの水利組合(LOMIA)の土地登記簿(2004~2010年)を統計処理した結果、約1800名が登録しており、女性比率(約21%)に対して女性の所有面積比率が低く(約16%)、個々の所有面積も男性より低い層に集中していることが判明した。また水利組合の議長、副議長、事務局長は男性が占め、女性は会計役を務めている。一般の農民は、組合について情報を有せず、会合や役員選出、新会則などについて理解していない。LMISでは1990年代から上流と下流地区の間で水利権争いが激化しており、LOMIAは実質上機能していないことが判明した。LMISでは農民男女の階層分化が進み、大規模土地所有者、中小規模土地所有者、耕作者(夫や家族の土地を耕作、他人の土地を借りて耕作)、賃金労働者(最貧困)に分かれる。耕作者は賃金労働者を兼ねることも多い。一般に女性世帯主世帯が最も貧困であると言われているが分化傾向も見られる。貧困女性は生き抜くために各種のソーシャルキャピタルを動員し生計戦略の多様化を図っている。調査成果については、ダルエスサラーム大学、農業省関係者等と情報共有を図った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本語及び英語による既往研究のレビューを終了し、タンザニアにおける3週間の現地予備調査も順調に終了した。新たな発見も多く、貴重な統計資料や土地台帳、圃場のプロット図などの入手も行うことができた。今年度の研究成果については、タンザニアでダルエスサラーム大学、中央政府およびキリマンジャロ州の農業省関係者等にフィードバックするとともに、東京大学社会科学研究所の研究会及び国際セミナー等で発表した。
|
Strategy for Future Research Activity |
収集した情報や統計のデータ処理を行う。さらに、その結果をもとに半構造的インタビューによる現地本格調査を、約1~2か月間、タンザニア国キリマンジャロ州ローアモシ灌漑地区において実施し、さらにデータ分析する。その結果を論文にまとめる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
関連する書籍類・物品の購入、タンザニアにおける1~2か月間の現地本格調査の実施、スワヒリ語による論文や関連図書の翻訳、日本国内及び海外における学会投稿・発表など。
|