2012 Fiscal Year Research-status Report
マリー・キュリーのキャリアに見る、科学アカデミーのジェンダー問題
Project/Area Number |
23510347
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
川島 慶子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20262941)
|
Keywords | 国際研究者交流(フランス) / 国際情報交換(フランス) / 科学アカデミー / マリー・キュリー / ノーベル賞 |
Research Abstract |
初年度から継続している科学アカデミーのデータベースが、英語で確認できる範囲の部分はほぼ完成した。これによって、17世紀から18世紀に成立し、今日まで残っている科学アカデミーの中の、どの組織がマリー・キュリーを評価し、どれが評価しなかったかを平成25年度に確認できる準備が整った。また、マリー・キュリーの科学アカデミー立候補の前後のフランスの政治状況、あるいはジャーナリズムの状況も、フランス国立図書館のデーターベースを利用することによって、かなりの部分を明らかにすることができた。また、科学研究費を使用したわけではないが、昨年はNHKに出演したことから、演出家が当時のフランスの新聞の現物を見つけ、その中のマリー・キュリーに関する記事を確認できたことはおおきな成果であった。ホームページに関しても、マリー・キュリー関係のものを充実することができた。さらに、アカデミーに関して、夫で共同研究者であったピエール・キュリーの科学アカデミー立候補時のデータも、フランス国立図書館から入手でき、同じレベルの研究者であっても、性の違いによって扱いがどう変わるのかということを、ジェンダー的側面から確認することができた。最後に、年度をよぎったために、科学研究費での出張ではなかったが、パリのキュリー博物館の学芸員より、科学アカデミー立候補についてのマリー・キュリー批判と、フランス社会とカトリック教会の位置づけ、また当時の教育制度改革がどのように関係しているのかを解説してもらうことができた。これは、厳密な宗教的規範が存在しない日本人研究者にとって、貴重な情報であった。最後に、東日本大震災により、なかなかフランス人研究者の招へいがかなわなかったが、フランス化学史学会会長のダニエル・フォーク氏が、平成25年度の招へいに承諾してくれた。これによって、本研究はさらに進展するものと考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初はデータベースの作成に時間がかかり、この点で遅れていたが、昨年度にかなりの部分を完成させることができた。また、上でも書いたが、NHKとの仕事により、演出家から20世紀初頭のパリのジャーナリズムについての直接の資料を閲覧することが可能となり、この点については思いもよらぬ成果をあげることができた。マリー・キュリーのアカデミー立候補時点の状況についても、フランス国立図書館の電子化資料が以前より簡単に入手できるようになり、確実に状況分析できる環境がととのった。啓蒙活動については、3度の講演とテレビ出演をおこない、十分な成果をあげることができたと思っている。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後は、平成24年度に入手した資料を読み解き、マリー・キュリーが科学アカデミーに立候補し、落選した時点までの経緯を明らかにすると共に、その10ヶ月後に起きた藍綬ヴァン事件と、二度目のノーベル賞受賞に至る経緯と、アカデミー落選事件との関連性を分析したい。また、英語資料についてはほぼ終了した世界の科学アカデミーのデータベースに加えて、できるだけ原語の資料による情報を追加した、より完成度の高いデータベースを作成することが今後の課題である。これらについて、近代フランス科学の専門家であり、フランス化学史学会会長のダニエル・フォーク氏を招へいし、氏との学術交流を通して、共に検討する。こうすることによって、日本人にはわかりにくい、フランス文化の特徴をより深く理解する。さらに、昨年度の研究により、当時はジェンダーの問題と科学、宗教、民族の問題が非常に複雑にからんでいることが判明したので、このあたりの分析も、より広い範囲の資料を検討することによって、深めていきたいと思っている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
今年度はもっとも大きな支出として、フランス化学史学会会長のダニエル・フォーク氏を招へいする予算を計上する。また、初年度より継続しているデーターベース作成のために研究補助および、コンピュータの環境整備費を必要とする。講演などでよりスムーズに資料を聴衆に見せるための機械やソフトの購入、および資料の作成のためにここでも研究補助を必要とするのでこの費用を計上する。さらに、研究成果の発表のための印論文印刷費、および英文での発表のための翻訳代、ホームページへの成果の公表のためのデザイン代なども必要とする。資料調査、研究の口頭発表などのための国内旅費および、関連図書、データの購入などの諸経費も計上する。その他、本研究に関連するアナログ資料のデジタル化のために必要な経費とそれをするための道具の購入のための経費を計上する。
|
Research Products
(11 results)