2013 Fiscal Year Research-status Report
マリー・キュリーのキャリアに見る、科学アカデミーのジェンダー問題
Project/Area Number |
23510347
|
Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
川島 慶子 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (20262941)
|
Keywords | マリー・キュリー / 科学アカデミー / 女性科学者 / ジェンダー / 放射能 |
Research Abstract |
今年度はマリー・キュリーが属していた世界の科学アカデミーについてのデータベースが完成し、それと、18世紀に欧米に成立していた科学アカデミーとの重なり部分についての分析も行うことができた。これによって、マリー・キュリーをメンバーとして選んだ科学アカデミーの傾向と、選ばなかったアカデミーの傾向との比較をおこなうこともできた。 もうひとつの成果は、マリー・キュリーがパリの科学アカデミーに立候補して落選した経緯を当時の新聞記事から分析したことである。ここからわかったことは、現在のマリー・キュリーの高い名声から予想もできない、当時の女性差別による偏見である。マリー・キュリーの力行法に反対する保守的なマスコミの多くは、ラジウムの発見を夫である、故ピエール・キュリー単独の研究成果と見ており、妻であるマリーをその助手として扱うという記事を載せている。こうすることで、17世紀に成立した伝統ある科学アカデミーの正式なメンバーとしては、マリー・キュリーはふさわしくないということを宣伝しようとしたことがわかる。なぜこうした手段をとったかというと、ピエール・キュリーは正式のメンバーであったので、マリー・キュリーが彼と同等な研究者ならば、正式メンバーになれないのは矛盾してしまうからである。 もうひとつの成果は、この事件が、当時のフランスの政教分離政策に対する伝統擁護派の強力な反発と関係していることである。フランスはこの問題で二つに分裂状態にあり、無神論者のマリー・キュリーは保守派のマスコミにとって、女性であるだけでなく、宗教的にも敵対者であったことが、その論調を大きく左右したことがわかった。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
なかなかすすまなかったマリー・キュリーが属していた科学アカデミーのデータベースがついに完成したこと。また、18世紀に成立した欧米の科学アカデミーと先のデータとの突き合わせができたこと。
|
Strategy for Future Research Activity |
今年度は研究の最終年なので、完成した科学アカデミーのデータベースから分析できる結果を論文にまとめたい。また、当時の新聞記事の分析からわかった3つの重要な事柄、ジェンダー問題、宗教問題、この二つと科学との関わりについて、放射能以外の当時の最先端の科学研究との関わりを分析し、論文にまとめたい。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学内の仕事などで多忙だったため、当初計画したほどには出張ができなかったため。 次年度は最終年度なので、論文制作とデータベースを美的に表現することにこの経費を使用したい。
|
Research Products
(7 results)