2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
千葉 惠 北海道大学, 文学研究科, 教授 (30227326)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 完成態 / 力能態 / 実働態 / 心魂 |
Research Abstract |
アリストテレスの『デアニマ』の研究において、必須となるアリストテレスの様相存在論について研究し、日本西洋古典学会(2011.6、静岡大学)およびブラジルにおけるアリストテレス学会(2011.6、カンピナス大学)において発表した(ブラジルは招待講演)。その後9月にオックスフォード大学哲学科教授David Charlesとこの様相存在論について共同研究を英国にて行った。その旅費の支出にあてた。心魂の定義は「力能態において生命をもつ自然的物体の完成態」というものであるが、この力能態、完成態それから実働態についての理解を深めた。翻訳と註解執筆に不可欠な作業を遂行したといえる。従来、「実働態(energeia)」と「完成態(entelecheia)」が明確に判別されなかったが、アリストテレスはエルゴン(働き)次元とロゴス次元の判別をなしており、その解明に力をそそいで一定の成果を見た。ロゴス次元においては力能態(dunamis)の同一性は完成態により特定される。さもなければ力能態は不定である。その力能態の行使がエルゴン次元における実働態であり、それは未完成な実働としての運動と完成されたものの実働が識別される。前者は完成態に向かうものであり、後者はそれ自身完成態においてある。これら様相の三つの概念はこのような関係においてあり、力とその発現からなる存在者一切の解明に向かっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アリストテレス『デアニマ」の翻訳については第二巻の魂の定義の個所から進めている。その解明に必須なものが様相存在論であり、それはこの一年で著しく進展し、ほぼ整合的な見解に到達したと言える。さらに最も困難な個所とされる第三巻の「ヌース(叡知)」についても或る展開を見ることができた。魂の認知的なものと人格的なもの全体を統合するものとして、アリストテレスはその魂の根底部位にヌースを定位している。そもそも「ヌース」は尊称honorific titleであり物質に還元されない部位としてその存在主張がなされている。これにより魂全体を統一的なものとして語ることができる。
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Strategy for Future Research Activity |
6月にオックスフォード大学におけるアリストテレス学会で様相存在論について研究発表を行う予定である。すでにチケットは購入してあり、その支出にあてる。『デアニマ』第二巻の翻訳と註解を進める。9月8-9日には東京における「ギリシア哲学セミナー」においてアリストテレスの知識論と探求論について発表予定である。研究発表と討議のフィードバックにより改善していきたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
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