2014 Fiscal Year Annual Research Report
環境思想の深化と強化-現代ドイツ実践的自然哲学研究
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23520023
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
山内 廣隆 広島大学, 文学研究科, 特任教授 (20239841)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2015-03-31
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Keywords | 国家と宗教 / 新自由主義批判 / ヘーゲル / ルートヴィヒ・ジープ / レオ・シュトラウス / 政治哲学 / 啓蒙主義批判 / EUとカント |
Outline of Annual Research Achievements |
本科研は「3.11」以前に計画され、実践哲学の応用的部分の解明が中心であった。しかし、「3.11」を経験し、その方向を修正させていただいた。つまり、「3.11」後、ドイツ実践的自然哲学に基づく、より哲学的な議論が必要になり、現代の諸問題を、ヘーゲル哲学についての現代ドイツ実践哲学の解釈に基づいて原理的に考察する必要に迫られた。研究年度が一年延びたのもそのためである。 本年度はこの計画に基づき研究し、その成果を『ヘーゲルから考える私たちの居場所』(晃洋書房、平成26年11月出版)としてまとめ、上梓することができた。研究期間を一年延長させていただいたことによって、この成果にたどり着けたことに感謝したい。 さて、この成果物の中身は、ドイツ実践的自然哲学の泰斗、ルートヴィヒ・ジープの考えに基づき、現代において大問題になっている「国家と宗教」の関係のあるべき姿を論じたものである。ヘーゲルのフランス革命解釈を出発点に、国家と宗教の関係を相互に異質なものとして区別しながらも、なお両者は相補的関係にあるというヘーゲルの論点を明らかにすることによって、その観点から現代批判(殊にイスラム批判)の視点を得ることができた。これが第一の成果である。 次に、ヘーゲル哲学の現代的意義はどこにあるかを深く検討した。ヘーゲルの国家論は毀誉褒貶の二面性を持つが、その優れたところは「自由と平等」という二つの近代的価値の実現を目指したところにある。まず、ヘーゲル哲学の神髄はこの相対立する価値を同時にこの世に実現しようとする苦闘の中にあることを明らかにした。そしてその視点から、現代アメリカの「新自由主義」は平等をないがしろにして「自由」だけを実現しようとする、非人間的独善的思想であることを明らかにした。これが第二の成果である。
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