2013 Fiscal Year Annual Research Report
「情動的言語使用」の哲学-ニーチェと/の「コミュニケーション理論」
Project/Area Number |
23520032
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Research Institution | Morioka College |
Principal Investigator |
齋藤 直樹 盛岡大学, 文学部, 准教授 (90513664)
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Keywords | 哲学 / ニーチェ / 情動性 / 身体 / 言語 / 自然主義 / フランクフルト学派 |
Research Abstract |
身体的情動性に定位した「情動的言語使用」をめぐるニーチェの思想を体系的に取りまとめた前年度までの研究成果をふまえ、今年度は当の「言語論」をより広く「自然主義」の文脈の中に位置づけるべく、ニーチェ思想の現代的な意義についての論究を発展的に展開した。 具体的には、「ディオニュソス的自然」「自然的生」あるいは「自然的情動性」といった種々の「自然」概念に定位したニーチェの認識論・道徳論を、一般に「自然主義」と呼ばれる見地―「道徳(あるいは認識)の基礎を自然的事実や傾向性に求めることによって、道徳(あるいは認識)を経験科学的に探求されうる自然的世界の中に位置づけようとする」(ブライアン・ライター)立場―から包括的に再検討した。結果として、ニーチェによる認識や道徳の「自然化」の手続きの最終的な到達地点は、「身体」を無意識的に作動する諸々の自然衝動のヒエラルキーと見なし、その頂点に位置するわれわれの意識的・合理的な認知活動を、そういった衝動性の側から再構成しようとする「身体的情動性の現象学」にある、という観点を確立した。その上で、後期ニーチェが理論的に定式化しようとしていた「全体現象としての力」と呼ばれる包括的な「自然」概念の内実を、改めて詳細に分析することが試みられた。 さらに、以上のようなニーチェ解釈から得られた知見を、前年度の研究において論究したアクセル・ホネットの立場、すなわち、合理性を偏重する従来の「討議理論」を批判し、身体的情動性に根ざした他者への「共感」あるいはその「承認」のあり方を、新たなコミュニケーションパラダイムとして導入する必要性を主張する立場と比較検討した。結果として、そういったコミュニケーション理論の「自然化」の試みに対して、ニーチェ独特の「自然主義」が果たしうる寄与の可能性が明らかにされ、彼の「自然」概念を現代的な文脈において評価する手掛かりが獲得された。
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Research Products
(1 results)