2013 Fiscal Year Research-status Report
日本で発見されたオリヤー語『マハーバーラタ』「津島貝葉」の校訂テキスト作成
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23520072
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Research Institution | Otani University |
Principal Investigator |
DASH Shobha 大谷大学, 文学部, 准教授 (20460660)
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Keywords | Sarala dasa / Mahabharata / マハーバーラタ / オディアー語 / オディシャ― / 津島貝葉 / Palmleaf manuscript / 貝葉写本 |
Research Abstract |
本研究は、愛媛県宇和島市津島町に残るオディアー語版『マハーバーラタ』の貝葉写本「津島貝葉」に関するものである。『マハーバーラタ』研究、とりわけその受容史の解明に有益である当該写本の校訂テキストの作成を中心とし、「津島貝葉」の異本の入手および「津島貝葉」を底本とした『サララー・マハーバーラタ』「森林章」第一部の校訂テキストの作成を目的としている。これらの目的を達成するために研究を進め、2013年度は、以下のような成果を得た。 (1) オディシャー州の州立博物館を訪問し、「津島貝葉」の校訂に当たって、異本となる2本の貝葉写本のデジタルデータを追加入手することができた。両方の写本は、虫による損傷が酷いため、西オディシャーの異本として部分的に参考にしていく予定である。また、西オディシャ―・バトリ村の個人蔵およびサンバルプル大学博物館蔵にもう2つの異本存在を確認でき、現地へ赴きデジタル撮影を行なった。これらの異本の文字解読を行ない、そのローマ字入力は今後の作業として進める。 (2) インドで海外研究協力者のDr. M. Maithrimurthi(ハイデルベルグ大学)、Prof. U. N. Sahoo(ウトカル大学)およびDr. Anirban Dash(プーナー大学)と研究懇談会を実施し、2012年度に行なった研究内容を検証した。さらに、すでにローマ字入力済みの異本を用いて、出版レイアウト及び校訂のための正しい用語を確定するなど共同研究も行なった。 (3) マドラス大学の東洋研究所を訪問し、所長のSiniruddha Dash 教授、Prof. K.V. Sharma Research Foundation研究所を訪れ、研究員のDr. Mamata Mishra氏から校訂技法および、『マハーバーラタ』のような説話文学に関する写本の校訂作業を行なう際に出会う問題点について議論をした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、宇和島市津島町に保存されている17世紀の初頭頃に書写され、江戸時代中期頃に日本に伝来したと思われているインド東部・オディシャー(オリッサ)州の『マハーバーラタ』の貝葉写本「津島貝葉」の異本の入手およびその校訂テキストの作成を目的としている。 この研究目的を達成するために、先ず「津島貝葉」の校訂本作成のために必要とする異本の選択とその入手は不可欠であった。そのため、オディシャ―州立博物館所蔵より『サーララーマハーバーラタ』「バナパルバ」(森林章)の2本のデジタルデータを追加入手とともに個人蔵およびサンバルプル大学博物館蔵よりも校訂の異本となる2本の貝葉写本のデジタル撮影を行ない、研究資料として納めた。 2013年度内に海外研究協力者たちと研究懇談会を実施した。2012年度に行なった研究内容を検証しながら、これから行なっていく研究方針について具体的な話しもできた。さらに、すでにローマ字入力済みの異本を用いて、出版レイアウト及び校訂のための正しい用語を確定するなど共同研究も行なった。 マドラス大学の東洋研究所を訪問し、所長のSiniruddha Dash 教授、Prof. K.V. Sharma Research Foundation研究所を訪れ、研究員のDr. Mamata Mishra氏から校訂技法および、インド叙事詩『マハーバーラタ』のような説話文学に関する写本の校訂作業を行なう際に出会う問題点についてした議論は今後の校訂の際に非常に参考になる。 以上のような理由により、当研究の目的を達成するために2013年度に行なった研究の達成度はおおむね順調に進展していると自己点検する。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は、平成25年度に行なった基礎作業をベースに写本の解読を遂行し、校訂テキストの作成に取りかかる。まずは、2013年度にオディシャ―州立博物館所蔵、サンバルプル大学蔵および個人蔵より入手した『サーララーマハーバーラタ』「バナパルバ」(森林章)の異本のデジタルデータを整理する。そして、「津島貝葉」の校訂テキスト作成のためこれらを異本として用い、その文字解読およびローマ字入力は第一作業とする。おおむね異本の入手は完成しているので、解読可能な異本のローマ字入力された文を偈ごとに平行に並べ、その相違箇所のリストを作成する。校訂作業は、M. Maithrimurthi博士の助言に基づきDASH Shobha Rani(研究代表者)、DASH Anirban博士(海外研究協力者)、SAHOO Udaya Nath博士(海外研究協力者)が行なう。作業の進行状況により、必要であれば、作業従事者を増加/変更する。それぞれが担当した箇所を毎年少なくとも2回の読み合わせを行なった上で最終チェックをする。研究代表者は本研究に関わる全ての研究者と頻繁に連絡をとり、コーディネーターの役割も果たす。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本務校の予定外の公務が多く重なったことや、2013年12月にオディシャー州立博物館に調査訪問を予定していたが、相手側との日程調整がつかなかったことなどにより、本年度に予定していた海外調査を計画通り行なえなかった。また、上記の理由により、校訂の際に異本として使用する貝葉写本のデジタルデータの入手時期が非常に遅くなった。そのため、使用予定をしていた旅費・資料費・データ入力に関する謝金などの出費ができなくなった。これらのことが次年度使用額が生じた主な理由である。 2014年度の主な研究費使用計画は以下の通りである。 (1) 2013年度に入手した4本の貝葉写本のデジタルデータを「津島貝葉」の校訂テキスト作成のため異本として用い、その文字解読およびローマ字入力を第一作業とする。(2) 最終年度の研究になるため、海外研究協力者たちとの打ち合わせを実施し、校訂作業の最終確認を行なうことが必要である。(3) 三年間の研究成果をまとめ、国内学会(日本南アジア学会、日本印度学仏教学会)および海外学会などで研究発表を行ない公表する。(4) 「津島貝葉」が書かれたオディシャ―州においてオディアー語大学院学科がある、ウトカル大学およびサンバルプル大学でセミナーを開き、古典オディアー語を研究している大学院の学生たち、研究者たちにも研究成果を伝える。 以上のような研究方針であるため、研究費の大部分は旅費、謝礼金およびセミナー開催費用として使用する予定である。
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Research Products
(1 results)