2012 Fiscal Year Research-status Report
ヴァリニャーノ『日本史』の翻訳・分析に基づく十六世紀日本の比較宗教研究
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23520081
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
狭間 芳樹 京都大学, 文学研究科, 研修員 (80588046)
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Keywords | キリシタン / イエズス会文書 / ヴァリニャーノ / 比較宗教学 / キリスト教 / 仏教 / 浄土真宗 |
Research Abstract |
平成24年度に引き続き、イエズス会日本巡察師ヴァリニャーノ(Alessandro Valignano, 1539-1606)が著した『日本史』(Del Principio y progresso de la Religilon Christiana en Japon)の翻刻・翻訳を進めると同時に、ヴァリニャーノの思想的特徴の一つである「適応主義」の分析を通して、近世日本にキリシタンと同じく興隆した仏教宗門である一向宗(浄土真宗)とキリシタン宗門との比較考察をおこなった。なお、『日本史』には、スペイン語をはじめ、ポルトガル語やイタリア語、ラテン語などが混在しており、翻訳が難解であるといった事情から、より正確な史料読解を期すために、それら中世各国語の翻刻に熟達した研究者(メキシコ国立自治大学・有村理恵博士)に協力を要請し、精緻な翻刻・翻訳に努めた。 また、イタリアのArchivum Romanum Societatis Iesu(イエズス会ローマ文書館)やスペインのBiblioteca de la Real Academia de la Historia(マドリード王立史学士院図書館)などに赴き、ヴァリニャーノの思想分析に必要な関連史料の閲覧および複写を実施したほか、イタリアではヴァリニャーノの出身大学であるパドヴァ大学にも訪れ、複数ある当大学図書館に所蔵されているヴァリニャーノ関連資料の状況などについても調査をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『日本史』の翻刻・翻訳をさらに進めると同時に、ポルトガルのBiblioteca da Ajuda(アジュダ図書館)所蔵版稿本と、イギリスのBritish Library(大英図書館)所蔵版稿本とについて、両者の異同を比較し、『日本史』の構成内容について検証するなかで、ヴァリニャーノが『日本史』を執筆するに至った意図についても考察を進めた。 また、そうした一連の分析作業を通して、当時の日本仏教の一宗門である一向宗(浄土真宗)とキリシタン宗門とを比較し、考察をおこなうことで、ヴァリニャーノの日本宗教理解、特にシンクレティズム(宗教混淆)をともなった仏教や神道をどのように理解していたのかについても次第に明らかになりつつある。
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Strategy for Future Research Activity |
当該史料の分析をいっそう推し進めるにあたり、前年度に引き続きメキシコ国立自治大学の有村理恵氏に研究協力を依頼し、より正確な史料の理解に努める。また、キリシタン研究の第一人者である五野井隆史氏(東京大学名誉教授)や、田所清克氏(京都外国語大学教授)、竹下・ルッジェリ・アンナ氏(京都外国語大学准教授)らポルトガル語、イタリア語の専門研究者に校閲を依頼する予定である。 また、並行して、ヴァリニャーノの『日本史』とルイス・フロイスの『日本史』との比較をおこない、さらに、キリシタンと一向宗との比較研究を進めるために、近世日本思想史などを専門とする研究者をメンバーに迎えた研究会を開催して思想的分析を深める。なお、研究会のメンバーとしては、東馬場郁夫氏(天理大学)、東光博英氏(京都外国語大学)ら、宗教学、キリシタン史料の研究者をはじめ、近世日本思想史(特に真宗史)などの研究者の招聘を予定している。 以上、ヴァリニャーノの日本宗教理解を手がかりに、近世日本の宗教事情や当時の人々の宗教意識を解明する。そして、平成23年度から平成25年度までの活動全体の研究内容をとりまとめた研究成果の発表をおこなう。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
『日本史』の分析作業を進めるにあたって必要な史料の複写代や、成果発表のための学会参加といった旅費、また、研究会実施に際して必要な参加者への交通費等の支給、それに、翻訳の推敲や校閲に関する人件費・謝金などが平成25年度研究費の主たる使用予定である。 そのほか、「設備備品費」として、平成25年度に刊行・発表され、本研究に深く関連する文献の購入、「消耗品費」(OA用品や文具類)の購入、また、これまでに複写・収集した資料のうちで貴重なものについての製本代といった支出を計画している。
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Research Products
(4 results)