2013 Fiscal Year Annual Research Report
聖遺物の複製化・商品化をめぐるマテリアル・イスラームの研究
Project/Area Number |
23520083
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Research Institution | Takasaki City University of Economics |
Principal Investigator |
小牧 幸代 高崎経済大学, 地域政策学部, 教授 (20303901)
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Keywords | イスラーム / 南アジア / 聖遺物 / 預言者 / 聖者 / 聖地 / 聖典 / 儀礼 |
Research Abstract |
研究期間の最終年度となる平成25年度は、南アジアのムスリム多住地域(インド、パキスタン、バングラデシュ)におけるイスラームの聖遺物の複製化・商品化現象に関する現地調査・文献調査にもとづいて作成してきたデータベースをもとに、インド、パキスタン、バングラデシュにおける補足的な調査を実施した。今回の補足調査を通じて、いずれの国においても、数年前よりもさらに聖遺物の複製化・商品化現象が進行している様子が明らかとなった。この現象を支えているのが、世界の工場といわれる中国だということが、南アジアにおける現地調査を通じて分かってきた。そのため、中国におけるイスラームの聖遺物グッズの製造・受注・販売の現状に関する現地調査も実施した。 こうした南アジア中心の調査と同時に、イスラーム以外の宗教における聖遺物信仰の歴史と現状を把握するため、昨年度に引き続きヨーロッパ・キリスト教世界での調査も実施した。昨年度までのイタリア、フランス、ドイツというカトリック世界とは対照的なイギリス、すなわちプロテスタント世界の聖遺物信仰否定の歴史と現状を調査研究の対象に加えることで、聖遺物の複製化・商品化現象の地理的分布と普遍性・特殊性を浮き彫りにすることができた。 以上の現地調査と、継続的におこなっている文献研究を通じて、南アジアにおけるイスラーム聖遺物信仰と聖遺物グッズの氾濫状況が、前近代的な呪術的信仰の残滓ではなく、むしろ9.11以降の南アジア(特にインド・パキスタン)における異なる宗教運動の間の対立的な関係と、近隣諸国・欧米諸国との間の戦略的な政治経済外交関係の文脈の中で捉え直す必要のあることが明らかとなった。 こうした調査研究成果の一部は、学術論文および研究発表・学会発表というかたちですでに公開している。今後は、写真・図表を多用した一般向けの図書という分かりやすいかたちでの公開も予定している。
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Research Products
(4 results)