2011 Fiscal Year Research-status Report
近代ドイツにおける宗教と出版社の関係についての研究
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23520084
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Research Institution | Seigakuin University |
Principal Investigator |
深井 智朗 聖学院大学, 付置研究所, 教授 (40306379)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | ドイツ / 思想史 / 編集者 |
Research Abstract |
2回にわたり、ドイツのミュンヒェン、フランクフルト、アウクスブルク、ポツダムを訪問し、資料調査を行い、新しい資料を発見、収集した。またその際関連する研究者との意見交換を行った。とりわけ、これまで未見のミュンヒェンのクリスティアン・カイザー社の資料、またポツダムのアフレット・プロッテ社の資料を収集することができ、それらを用いて、著者と編集者、出版社と思想の市場という問題について研究を進めた。またそれらの資料を製本・保存し、さらにドイツにおける出版社と編集者の社会的機能、学問的な貢献について、学会や研究会で発表し、以下論文にまとめた。1、「オイゲン・デイーデリヒスと神学的表現主義」『日本の神学』50号(2011年)2011年9月6日刊行 日本基督教学会編 教文館 74~99頁 (査読有)2、「編集者アルベルト・レンプの死を悼む手紙―ミュンヒェンの神学的アヴァンギャルドとしてのゲオルク・メルツとクリスティアン・カイザー社」『聖学院大学総合研究所紀要』53号(2011年)に投稿。3、「編集者オイゲン・デーデリィヒスの『思想』を取り出すことは可能なのか」『聖学院大学総合研究所紀要』54号(2012年)に投稿。4、「ニューヨークの亡命知識人パウル・ティリッヒと京都の神学者有賀鉄太郎―有賀鉄太郎所蔵のパウル・ティリッヒ著『社会主義的決断』(一九三三年)をめぐって」『日本研究』国際日本文化研究センター編 第54集 平成24年3月 139~154頁 (査読有)
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度予定していた研究計画については全て完了した。 その理由としては第一にドイツでの協力体制が整っていたことをあげることができる。ミュンヒェン大学のフリードリヒ・ヴィルヘルム・グラーフ教授、アルフ・クリストファーセン教授、フランクフルトのガンゴルフ・ヒュービンガー教授とは研究のための有益な意見公開をすることができた。第二に、これまでの研究との関連で本件を進めることができたことをあげることができる。これまでの科研費による研究も、思想史と社会史との有機的連関に関するものであり、今回もそこでの研究の蓄積を有効に生かすことができている。第三に、研究所での研究支援体制が整っていたことをあげることができる。さらに研究所に配属されていることで、教育の時間よりも研究に重点をおくことができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の第二年目は、収集した資料をさらに分析し、さらに必要な資料の収集を行い、著者と編集者(あるいは出版社)との思想的連関、社会的交流の解明、そして編集者は出版された「思想」にどれほどかかわっているのか、という問題を解明するためのサンプルをできる限り多く収集、提示したい。 基本的には方法論、研究方針についても昨年度の方向性を踏襲し、資料の収集と資料に基づく分析を心がけ、思想史と社会史との連関という巨視的な問題意識と、編集者の思想は、思想的テクストにどれほどの影響を与えるのか、という今回の研究の課題とを追求して行きたい。 またできるだけ、研究成果を公にし、また研究者との対話の機会を増やし、自己点検と研究成果の社会的還元につとめたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究第二年目は、クリスティアン・カイザー社の分析を中心に行う。 第一に、クリスティアン・カイザー社の社主であり、編集者であったアルブレヒト・レンプについての研究を行う。そのために資料収集、またクリスティアン・カイザー社の雑誌『時の間』とそれに投稿した思想家との社会的、思想的関連の分析などを行う。 第二に、資料調査、分析を行った資料をもとに、学会、研究会で発表し、論文にまとめる。 第三に、レンプ関係の資料がマールブルク大学神学部の図書館に保存されていることが明らかになったので、第一、第二の研究課題が本年度中に整理できた場合には、マールブルクに資料収集に出かける。 本年8月と可能であれば2月に調査のために渡独したい。また研究成果を日本語だけではなくドイツ語で公にし、研究成果の社会的還元と、国際的なレヴェルでの公開のための具体的な対応を試みたい。
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Research Products
(2 results)