2011 Fiscal Year Research-status Report
入宋僧の精神世界に関する文献学的および宗教学的研究
Project/Area Number |
23520091
|
Research Institution | Koriyama Women's Junior College |
Principal Investigator |
何 燕生 郡山女子大学短期大学部, 文化学科, 教授 (00292186)
|
Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
Keywords | 禅文献 / 南宋時代の入宋僧 / 仏教学 / 宗教学 / 思想史 / 中国 / 国際情報交流 |
Research Abstract |
助成金の交付を受けて、「研究計画」に従い、まずは中国への調査旅行を行った。これまての研究によると、入宋僧の宋に対する問題関心はおおよそ二つに大別でき、つまり、一つめは仏教典籍の獲得、仏教教義に関する難問の解決、修行方法の習得であり、二つめは寺院集団システムの導入だったという。今回はそのような見方を踏まえつつ、一方では入宋僧が当時実際に滞在していた禅宗寺院における文献調査を実施し、他方ではいくつかの地方図書館において、宋史における入宋僧の記録や当時中国の文人たちのとの交流に関する諸文献について具体的に調査した。これらの調査活動は、いずれも現地の研究協力者の協力を得て遂行したのである。そして次は国内における諸学会や研究会、シンポジウムなどに参加して、当該研究に関する資料の収集と最新の研究動向の把握につとめた。 以上の研究活動を踏まえ、その成果の一部を国際シンポジウムで相次いで発表した。一つ目は10月下旬に禅宗の発祥地でもある中国湖北省黄梅県で開催された「第二回禅宗文化高峰論壇」で「拈華微笑的思想史」と題する論文であり、これは基調講演という形で発表したものだが、「拈華微笑」に対する中日の禅僧の理解について比較検討し、その思想史的意義を探った。二つ目は3月下旬に国立台湾大学で開催された「東亜儒佛会通与争弁国際学術研討会」で「12-13世紀東亜禅宗与儒教」と題する論文であり、道元の著述に見られる三教一致説批判の言説を手がかりに、その歴史的背景などについて考察した。 震災を体験し、しかも原発事故の影響を受ける中での研究実施ではあったが、当初の予定通りの文献調査とそれに関する研究成果の発表を行うことができたことはとても大きな意義を持つものと考える。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(1)海外の研究協力者の協力を得たため、海外での文献調査が順調に遂行された。 (2)学会や研究会、シンポジウムに積極的に参加したため、当該分野の研究動向の把握につとめることができた。 (3)国際学会で研究成果の一部を発表したため、今後の研究の進展につながるきっかけを作ることができた。 以上の理由から、本研究はおおよそ順調に進んでいると考えるが、他方、震災および原発事故の影響のため、国内の連携研究者との連携が思うままできなかったことはとても残念に思っており、今後の課題となろう。
|
Strategy for Future Research Activity |
1.海外での文献調査を引き続き実施する。この研究は夏休みと冬休みの間に行う予定である。そして、前年度と同様、海外の研究協力者との協力体制を求めながら実施していくという方策を採ることになろう。2.国内での文献調査を引き続き実施する。この研究は夏休み、冬休みおよび春休みの期間に実施する予定であるが、連携研究者との連携を図りながら実施していくことになる。そうした学際的な取り組みを図る中で本研究の学際性を探っていきたい。3.学会や研究会、シンポジウムなどに積極的に参加し、可能な限り研究成果を発表していく。すでに予定されている海外の学会にも参加したい。それらを通して、本研究の国際性を高めていきたいと考えている。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
震災のため、連携研究者との連携研究体制が思うままに構築できなかったため、前年度の研究費の一部が繰り越される結果となったが、今年度は連携研究者との連携を十分に図りながら、その分を有効に使用する予定である。具体的には、三人の連携研究者との研究打ち合わせを行うための旅費に当てたい。そのため、京都や東京、仙台へそれぞれ一度出かけることになる。 それ以外については、「研究計画」の通りに実施する予定である。
|
Research Products
(4 results)