2012 Fiscal Year Research-status Report
介護と看取りの現場に根ざした近世日本思想史研究の構築
Project/Area Number |
23520094
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
本村 昌文 東北大学, 学術資源研究公開センター, 協力研究員 (80322973)
|
Keywords | 死生観 / 介護 / 看取り / 思想史 |
Research Abstract |
本研究の目的である17世紀日本の死生観の形成と展開を明らかにし、介護と看取りの現場とのつながりを検討するために、前年度の実績をもとに、以下のことを行った。 基礎資料の収集として、昨年度に引き続き、介護と看取りおよび死生観に関する研究文献を収集し、研究史の整理を行い、分析視角を明確化させた。 分析と考察として、昨年データーベース化をした近世往生伝の分析と考察を行い、仏教の死生観に関する知見を深化させた。こうした17世紀日本における死生観の諸相および昨年度に行った予備アンケート調査の結果をまとめ、現代日本の介護と看取りの現場に資する死生観を検討した。このような日本における死生観を歴史的に明らかにするとともに、それを現代日本の介護と看取りの現場に投げ返すことにより、研究を深化させているところに本研究の意義がある。こうした分析により得られた研究成果は、中国に開催された国際されたシンポジウム、本科研費をもとに開催した国内シンポジウムで報告した。 昨年度に引き続き、医療・介護従事者や家族介護者と定期的に研究会・座談会を行い、介護と看取りの現状把握と研究成果の還元につとめた。とくに今年度は、介護・看取りの現場で問題となる「家族に迷惑をかけたくない」という意識に注目し、「家族に迷惑をかけない終わりとは何か」をテーマとした座談会を宮城県仙台市で4回、東京都で2回、神奈川県川崎市で1回開催し、本研究の成果を深化させるようにつとめた。またセミナー3回(近世往生伝、現代日本の死者供養、日本仏教における看取り)、介護と看取りのフォーラム(テーマ:現代日本の介護と看取りの諸相)を開催し、研究を深化させるとともに、研究成果を社会に発信した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(理由) 基礎資料の収集として、計画通り、介護・看取りおよび死生観に関する研究文献を収集し、研究史の整理を行い、問題設定を明確化させることができた。 予定していた禅仏教の資料収集は、研究協力者の事情により、今年度も実施することができなかったが、かわりに昨年度に作成した近世往生伝のデータベースをもとに分析・考察を行い、17世紀日本における死生観の立体的な把握ができた。 昨年度に行った予備的なアンケート調査の結果を分析することを通して、現代日本の介護と看取りに資する伝統的な死生観の様相が明らかになってきた。今年度に本格的なアンケート調査を実施することはできなかったが、すでにアンケートの調査項目の最終チェック段階であり、最終年度である次年度にアンケート調査を行い、分析・考察を行うことで、十分に研究成果をあげることが可能である。
|
Strategy for Future Research Activity |
アンケート調査を実施し、現代日本の介護と看取りの現場に資する伝統的な死生観を明らかにし、日本思想史研究の新たな研究領域を開拓する。 上記の研究成果を国内外の学会、論文等により発信する。また研究成果をまとめるためにシンポジウムないしはフォーラムを開催し、研究成果を報告書としてまとめる。 あわせて医療・介護従事者や家族介護者と定期的な座談会・セミナーを開催し、研究成果を発信につとめる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したこと、またアンケート調査実施を次年度に行うことによって生じた未使用額であり、平成25年度の請求額とあわせ、次年度に計画している研究の遂行に使用する予定である。
|
Research Products
(5 results)