2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520109
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
平泉 隆房 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (20148357)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 白山信仰 / 日吉信仰 |
Research Abstract |
白山信仰が、山岳信仰でありながら全国各地に展開していることは、現時点における白山神社の分布をみただけでも一目瞭然である。ただ、それが、いつ頃どのような人々の手によって全国に勧請されたかとなると、不明な点が多い。従来、この点で白山御師による江戸期の伝播を想定する傾向が強いが、極めて説得力に欠けるものである。江戸期の白山御師の活動が美濃馬場を除いて、極めて低調であることが既に知られているからである。本研究では、この点で画期的な説を提示しつつある。つまり、平安後期から鎌倉・南北朝期にかけて、延暦寺による荘園拡大のなかで、白山信仰が日吉信仰とともに広まっていった、という説である。 全国に2千社ほどあるといわれる白山神社のなかからサンプルとして50社程度を選びだし、創建の由来やそれにまつわる経緯について検証した。石川県加賀地方といわれる、野々市市周辺、また福井県永平寺町周辺などを集中して検証した。これらの地域は、白山にほど近く、もちろん現在も白山神社が多数分布しており、歴史的にも白山信仰とそれなりの関係を有しているものと思われる。そして、当該地方に日吉神社が意外にも多く存在していることを確認した。やはり白山信仰と日吉信仰との間には密接な関係があるものと推論し、日吉社領、つまり延暦寺領の展開と、白山信仰の流布との間に関連があるとする私見を補強してくれるものと考える。 あわせて、研究の基礎作業として、白山信仰また日吉信仰関連の年表を作成しつつある。近年、白山比咩神社より三馬場を中心とした『白山信仰史年表』が出版され、日吉大社から60年以上以前に出された詳細な年表などに準拠しつつ、申請者(平泉)独自の年表を作成しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
全国に2000社ほど存在する白山神社(白山比咩神社を含む)と、同じく2000社ほどある日吉神社(日吉社、山王神社を含む)とを、国土地理院発行の5万分の一地形図上で確認する作業を実施した。両神社また、いずれか一方の存在が10社以下のような県は除外し、北陸3県、滋賀県、岐阜県、新潟県、山形県、秋田県、岩手県、福岡県、また関東地方などを重点的に作業した。その結果、日吉神社が集中して存在する地方や地域、また白山神社についても一定の成果が得られた。 さらに、石川県加賀地方といわれる、石川県野々市市周辺、また福井県永平寺町周辺などを集中して検証したが、これらの両地域から、講演を依頼され、その地域の方々と懇談する機会があった。出席者からの質疑応答の間に、多くの新知見を得ることができた。これらの地域は、白山にほど近く、現在も白山神社が多数分布しており、歴史的にも白山信仰とそれなりの関係を有していることは確実と思われる。そして、当該地方に日吉神社が意外にも多く存在しているもその際に確認した。白山信仰と日吉信仰との間には密接な関係があるものと推論し、日吉社領、つまり延暦寺領の展開と、白山信仰の流布との間に関連があるとする私見を補強してくれるものと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
1年目の、全国に2000社ほど存在する白山神社(白山比咩神社を含む)と、同じく2000社ほどある日吉神社(日吉社、山王神社を含む)とを、国土地理院発行の5万分の一地形図上で確認する作業は、非常に根気のいる作業で、予想以上に手間取った。現在の進捗状況は約半分である。しかし、一定の成果は得られた。ただ、そのため、現地に足を運んで、実際に神社関係者の方々から聞き取りをする時間的な余裕はなかった。 2年目・3年目は具体的に地域ごとに研究をしていきたい。サンプルとして選んだ現存する白山神社なかには、史料の欠如や残存する伝承があまりに断片的なため、創建の時期や事情がほとんどわからない白山神社も少なくない。また、明治初年の神社明細帳に記載される際に、祭神名などを曖昧なまま報告したことがすでに予想されている。いくつかの白山神社については、現地に実際に行って調査してみたい。 これまで、白山信仰に関して、本研究が考えている、延暦寺による庄園獲得の段階で延暦寺僧侶や日吉社神人によって、北陸地方を中心として北陸以北にも広まっていった、とする視点よりの研究はほぼ皆無と思われる。地域を、東北地方、北九州地方にまでひろげて、奥州平泉を日吉神人の活躍が顕著な地域を調査し、そこに白山信仰の形跡が残っていないかを探ってみたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の「今後の研究の推進方策」に記したように、国土地理院発行の5万分の一地形図上で白山神社、また日吉神社を確認する作業に手間取った。そのため、どの地方に白山信仰また日吉信仰の関連をうかがわせる顕著な傾向があるかを十分に把握することが遅れ、現地に行って調査することができなかった。そのため旅費を消化することができなかった。また、昭和17年刊『官幣中社日吉神社年表』によって、各地の日吉神社の創建年月をある程度把握できるが、その抽出にも手間取ったため、学生アルバイトをつかって、「白山信仰日吉信仰関係年表」をデータ化していく作業も、開始は年の後半からとなった。そのため人件費もかなり残ってしまった。 今年度は複数の現地に実際に足を運んで調査を進めてみたい。東北地方は、現在でも白山神社が多く存在し、同時に日吉神社(山王神社)もかなり存在する。そこの日吉神社、また白山神社は、神社本庁のデータによって所在がすべてわかっているので、創建がいつであるのかを逐次検証していく。それらに近似したものがあれば関連を随時検討すればよいわけで、時間や手間はかかるが、実施してみたい。旅費はそういうことにあて、さらに学生を使っての年表作製は継続して行い、人件費はそういったことに充当したい。 また、パソコン画面上で国土地理院発行の地形図を閲覧するために、どれくらいのディスプレイが必要であるかの検討には時間を要したが、本年はパソコンを購入して、さらに効率的に白山神社、日吉神社の所在地を、地形図の上で確認し、その地域的な特色や顕著な傾向を探っていく。
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Research Products
(1 results)