2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520109
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Research Institution | Kanazawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
平泉 隆房 金沢工業大学, 基礎教育部, 教授 (20148357)
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Keywords | 白山信仰 / 日吉(山王)信仰 / 白山神社 / 日吉神社 |
Research Abstract |
白山信仰に関する研究史をまとめた。具体的には、古代・中世を対象として、昭和戦後期を中心に、白山信仰解明につながると思われる論点、つまり、白山信仰の成立と展開、『泰澄和尚伝記』の信憑性、祭神論、白山曼荼羅、白山信仰の伝播等について、どのような議論が積み重ねられてきたかを概観した。論点は多岐にわたるが、下出積與氏や伊藤雅紀氏がすでに研究史をまとめられ、論点整理をされているので、それを踏まえつつ、最新の成果まで盛り込むことにつとめた。 つづいて、国土地理院発行の地形図(5万分の1、2万5千分の1)・地勢図(20万分の1)上で、白山神社(白山社・白山比咩神社・白山宮)と日吉神社(山王神社・日吉社・山王社)の存在を確認した。神社の所在地については、神社本庁が平成7年に全国神社祭礼総合調査を実施しており、その成果を活用させていただき、一部を白山比咩神社発行『白山信仰年表』所載の白山信仰関係神社一覧で補った。作業は2年がかりで、ようやく東日本(滋賀県を含めて、滋賀県以東、以北)全部の白山神社、日吉神社鎮座の大字乃至は小字を確認するに至った。西日本については、今後さらなる作業が必要である。地形図また地勢図に関しては、「カシミール3D」ソフトを用い、その大字乃至は小字に印を付す形で行った。パソコン画面上で一見しただけで、どの地方にどのように白山神社また日吉神社が、どれほど分布しているかを視覚的にとらえることができる。 現地調査としては、岩手県の平泉を訪ね、『吾妻鏡』に記述されていることで知られる、中尊寺の白山社・日吉社また平泉鎮守の白山社・日吉社を確認した。中尊寺の白山神社は有名だが、実は日吉神社が日枝堂として現存すること、また平泉の鎮守である白山社・日吉社が白山日吉堂として現に存在することを確認し、住職のご案内で拝観させていただき、祭祀の一部についても説明を受けることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
白山信仰に関する研究史を、古代・中世に限ってではあるが荒削りながらまとめることができた。 東日本(滋賀県以東、以北)に鎮座するほぼ全ての白山神社(白山社・白山比咩神社・白山宮)と日吉神社(山王神社・日吉社・山王社)の存在を、20万分の1地勢図上(また、5万分の1地形図、2万5千分の1地形図上)で確認することができた。作業は、「カシミール3D」ソフトを用い、その大字乃至は小字に印を付す形で行い、パソコン画面上で一見しただけで、どの地方にどのように白山神社また日吉神社が、どのように分布しているかを視覚的にとらえることができた。なお、参考として、同じく東日本に鎮座する熊野神社も地図上に確認する作業を終えている。 現地に赴いての調査は、用意周到な事前調査が必要だが、岩手県平泉町の毛越寺執事長藤里様、同総務部長志羅山様、また中尊寺の破石様のご協力をいただき、『吾妻鏡』にもみえる中尊寺北方鎮守の白山社、同南方鎮守の日吉社、平泉の東方鎮守の白山社・日吉社が、現存していることを確認すると共に、その祭礼の様子なども伺い、大いに参考になった。また、奥州の天台系寺院に、白山社また白山堂が祀られ、乃至は白山信仰に関連する神事を伝えていることも確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
白山信仰に関する研究史の、近世・近代の部分を調査研究してまとめる。これには相当量の著書・論文を参照する必要がある。ことに、近世に入ると、修験者の霊場として白山麓に点在する社寺が、活発に全国展開してその勢力を拡大していくとされているので、その足跡を明らかにしようとした研究には、注意を払って収集したいと考えている。成果は学術誌に掲載したい。 西日本(京都府・大阪府以西、以南)に鎮座する白山神社(白山社・白山比咩神社・白山宮)と日吉神社(山王神社・日吉社・山王社)を、20万分の1地勢図上(また、5万分の1地形図、2万5千分の1地形図上)で確認したい。作業は、「カシミール3D」ソフトを用い、その大字乃至は小字に印を付す形で行い、パソコン画面上で一見しただけで、どの地方にどのように白山神社また日吉神社が、どのように分布しているかを視覚的にとらえることができるようにしたい。 つづいて、東日本については既に作業が終了しているが、その結果から何を読み取ることができるかが最大の焦点である。中世における日吉社領の拡大等をテーマとした先行研究論文を参照しつつ、現在の神社分布から、中世における日吉信仰(日吉社)また白山信仰(白山社)の全国伝播の様子がうかがえないか、検討を進める。 これまで、熊野信仰の全国伝播の様子を、熊野社の分布とあわせて検討した研究があるので、そういったものを参考にしながら、この分析方法がどの程度有効なものであるかも、あわせて確認したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
24年度の当初の計画では、奥州平泉の中尊寺・毛越寺およびその周辺の日吉神社・白山神社の調査以外に、新潟県・山形県方面ほか数カ所の実地調査を予定していた。ただ、20万分の1地勢図上(また、5万分の1地形図、2万5千分の1地形図上)に白山神社また日吉神社を確認する作業に膨大な時間を要したため、奥州平泉以外の実地調査を行う余裕がなく断念せざるをえなくなった。当初予定していた旅費を中心に15万1千円ほどの研究費が未使用となった理由は以上のものである。 次年度も、西日本に鎮座する白山神社と日吉神社(場合によっては、参考のため熊野神社も)を20万分の1地勢図上(また、5万分の1地形図、2万5千分の1地形図上)で確認する作業には、多大の時間を必要とすることが見込まれる。そこで、次年度は、ハンディタイプの小型パソコンを購入し、常にどこにいても作業が進められる環境を整えたい。次年度の科研費60万円に、未使用の15万1千円を加えた75万1千円のなかから、このような費用を支出する予定である。 この作業が完成すれば、地図(「カシミール3D」ソフトを使用)を見ただけで、どの地方にどのように白山神社また日吉神社が、どのように分布しているかを一瞬にして視覚的にとらえることができ、研究の進展に大きく寄与するものと考える。
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Research Products
(1 results)