2013 Fiscal Year Annual Research Report
コッラード・ヴィーニの公共彫刻の政治史的・文化史的解読
Project/Area Number |
23520116
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Research Institution | Ibaraki University |
Principal Investigator |
甲斐 教行 茨城大学, 教育学部, 教授 (60323193)
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Keywords | 美術史 / イタリア / 彫刻 / ファシズム / フィレンツェ |
Research Abstract |
最終年度は、7月5日から9月18日まで、12月1日から14日まで、3月18日から4月12日までの三回イタリアへの海外出張を実施した。このうち夏期の出張では、フィレンツェ美術史研究所、フィレンツェ中央図書館等で、コッラード・ヴィーニが制作し、シチリア州ラグーサの郵政電信庁舎ファサード上に設置された九体の女性擬人像の図像解釈研究を行った。またそれら擬人像のジェッソ習作(フィレンツェ、個人像)を撮影調査した。その成果は11月30日刊行『五浦論叢』(茨城大学五浦美術文化研究所紀要)第20号に「コッラード・ヴィーニ作ラグーサ郵政電信庁舎寓意像小論」(pp.1-36)として、和文・伊文併記で発表した。夏期にはまた北イタリアヴェローナのクオーレ・インマコラート・ディ・マリア聖堂ファサードを飾るヴィーニの浮彫彫刻《聖母被昇天》を撮影調査した。12月及び春期には、中部イタリア、ウンブリア州テルニ大聖堂ファサード上に設置されたヴィーニによる八体の聖人像の撮影調査を実施し、周辺の聖堂の踏査による聖人図像の検討と、フィレンツェの上記図書館での図像調査を実施した。 この他、初年度と第二年度には、ヴィーニの伝記的消息と進歩史観を、存命する三名の弟子への取材により明らかにした。そして親交の深かったフィレンツェのホテル・バリオーニの経営者フランチェスコ・バリオーニが依頼した同ホテル開業25周年記念メダル《ケレス》を、彫刻家が信奉した進歩史観の観点から、文明の寓意と解釈し、個人蔵の習作を初公刊した。さらに北米の墓地のための《キリスト磔刑》の習作も初公刊した。 これらの研究成果は、従来研究が進んでいなかったファシズム期公共彫刻の内包するメッセージを捉える上で重要な貢献となるが、特にモノグラフ的考察がほとんど存在しなかったヴィーニ研究史において不可欠の参照点となるはずである。
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Research Products
(1 results)