2013 Fiscal Year Research-status Report
空間調整術としてのアート:ネオ・プレモダニズムの系譜学
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23520117
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
外山 紀久子 埼玉大学, 教養学部, 教授 (80253128)
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Keywords | 美学 / 身体感性論 / 芸能研究 / 舞踊研究 / 国際研究者交流(アメリカ、イギリス、ドイツ) / 現代アート / スピリチュアリティ |
Research Abstract |
平成25年度は、国内外で研究の途中経過を報告し、本研究課題の核心部分に接近するための道筋がより明らかになった。ポーランド、クラコフで開催された第19回国際美学会議で口頭発表を行い(2013/7/26)、近代の主体概念を相対化し、生存学的な古代の哲学/美学の伝統とも連なる「子どもの美学」を提唱した。特に身体論的観点からカウンター生政治の具体的方向を探る新たな視点が開かれた。栃木県立美術館での招待講演「マンハッタン、ダンス、掃除」(9/15)では、1960年代のポストモダンダンスの活動を中心に特定の場と交感するアート実践や「穢れ」論の文脈、芸能の古層との関わりからダンス発生の条件を考察した。 研究ネットワークの構築という点では、領域横断的に「空間調整術」の問題にアプローチする研究会を立ち上げ、第一回のシンポジウムを開催(2014/3/21)、60年代以降の拡大ダンス、拡大アート状況を「musica mundana/気の宇宙論・身体論」という問題圏のなかで再考する可能性が開けた。さらに、2014年5月に予定している国際シンポジウム「老いと踊り」の準備を開始し、コンセプトの設計、参加者の選定、プログラムの考案を通して、2012年6月のベルリンでの国際シンポジウム参加を機に関連テーマとして追求している、社会的に周縁化された身体の意義を再考する機会を得た。 海外調査としては、ポーランドでの学会の帰途ヴェネツィア・ビエンナーレを視察し、ネオ・プレモダニズムの重要なソースとなったユング、シュタイナー等の展示、シュタイナー室でのパフォーマンス、その他のサイトでのコンセプチュアル・アート展の再現等々、得るところ大であった。またアナ・ハルプリンのタマルパ研究所関連のワークショップ(10/19-10/20)に参加し、「場の浄化」に関わるそのプラネタリー・ダンスの調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究成果の公表、および(前年度に引き続き)研究者ネットワークの形成やテーマの洗い直し、アプローチの再考・更新という面では十分進展が見られた。特に研究会やシンポジウムの開催はきわめて有効であった。国外での成果発表や実地調査は一定程度行ったものの、当初予定していたミュージアムやアーカイヴ調査の時間を取ることができず、文献調査や国内での参加型調査に限定されてしまう傾向があった。主な理由は、校務や学会をはじめとする学術組織関係の業務が肥大し、慢性的に時間が不足していることによる。
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Strategy for Future Research Activity |
身体感覚を軸に領域横断的にネオ・プレモダニズムの事例を分析し、近代の美的主体のモデルから逸脱する非同一的境界的存在様態の有する脱社会化的/対抗文化的作用について、事例に即して考察を進める。前年までの研究で当該研究テーマの骨子となる部分はかなり鮮明になってきたので、近現代スピリチュアリティの系譜に連なる内外の芸術の資料収集や実地調査、研究のコアにある身体感覚の確認のためのワークショップ等の参加型調査を実施し、同時に可能なかぎり各段階の研究成果の発表を行うことで、さらに問題点の整理と再定義を進める。 前年度から主催者として企画に携わっている国際シンポジウムや研究会の開催を通して、国内外の研究者との研究交流を進め、最終年度の成果発表に向けて準備を続ける。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該年度に実施した研究会の報告書作成を次年度に行うため、および次年度に計画中の国際シンポジウムの開催費の一部(謝金等)に充当するため、次年度使用として繰り越すことにした。 研究会の報告書を出版費用の半額負担となる『埼玉大学教養学部リベラル・アーツ叢書』の形で刊行する。2014年8月末迄に発表者から完成原稿を入手し、9月をめどに発行する。 2014年5月に開催する国際シンポジウムに際し、海外から招聘する研究者に別途講演を依頼し、謝金を支払う。
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Research Products
(3 results)