2014 Fiscal Year Research-status Report
空間調整術としてのアート:ネオ・プレモダニズムの系譜学
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23520117
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
外山 紀久子 埼玉大学, 教養学部, 教授 (80253128)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 美学 / 身体感性論 / 舞踊研究 / 芸能研究 / 国際研究者交流(アメリカ、イギリス、ドイツ) / 環境芸術 / スピリチュアリティ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、国際シンポジウムの企画開催、関連する講演会の開催や研究会への登壇、これまでの研究成果をまとめる論考の執筆、研究ネットワークを確立に資する編著の刊行、研究方向の再調整といった点で有意義な進展があった。 具体的には、平成25年度後半から準備を進めていた国際シンポジウム「老いと踊り」(2014/5/23-5/24)を東京ドイツ文化センターで開催し、内外の研究者や舞踊家・芸術家の講演やレクチャー・パフォーマンス、対談・鼎談によって、現代社会、とくに舞台芸術のなかで周縁化されてきた規格外の身体の有する可能性を再考するとともに、内外の研究者との問題の共有や深化を図る機会を得た(これをもとにした著作の刊行のための検討を現在すすめている)。また、ポストモダンダンス研究の第一人者であるRamsay Burt氏の講演会を開催し(2014/5/30)、1960年代の実験的な舞踊実践、すなわち(ポストモダンでありかつネオ・プレモダンでもある)「拡大ダンス」状況のなかでも、特に脱社会化/対抗文化的作用を果たした事例についての理解を深めることができた。近代の主体概念の限定性を明らかにするものとして、前年度に国際美学会で口頭発表した「子どもの美学」のテーマを同様の文脈で継続した。さらに、京都造形芸術大学との共同プロジェクトの公開研究会において「老いとダンスとアストロエステ:旅立ちの日のための<音楽>」という題目で講演し(2015/1/24)、生存学ないし死生学的観点を踏まえ、「気(微細エネルギ―」の概念とそれに基づく身体論の枠組を従来以上に前景化して考察する試みを開始した。 前年度末に行った講演会の成果に自らの「空間調整術」関連の研究の全容を概観した論考を加えて、埼玉大学リベラル・アーツ叢書6『musica mundana:気の宇宙論・身体論』を刊行した(2015/3/25)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度はシンポジウムの開催による国際的ネットワークの形成や論点の再考・再吟味、および叢書の編集、刊行による研究成果の発表、その精度の再吟味という点では、突出した達成を果たしたと言ってよいと思う。前年度から重点的に着手してきたネオ・プレモダニズム的実践を参照する脱主体論に加え、特定の場/空間/環境の調整と心身の調整・変容との連動が前提されている環境芸術的観点への展開の面でとくに成果があった。他方、当初予定していた国内外での現地調査やワークショプ等の参与観察を行うことができなかった。主な理由は校務や学会関係の業務の多忙化に加え、家庭の事情で長期間の出張が困難であったことによる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度としてこれまでの不足分を補うとともに、新たに拓けてきた関連諸問題の精査によって、今後の研究につながる実質的なプランを作る。環境芸術型実践の現地調査、エコロジー思想と接続する舞踊・音楽論の集中的調査、芸術外のsomaticsないし心身制御技法の実地調査や参与観察を中心とし、25年度末に立ち上げた研究会の継続に向けて、講演会等を開催する。最終的に、本研究課題を中軸に据えた著作の刊行を目指して論考をまとめる。
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Causes of Carryover |
当該年度に開催した国際シンポジウムの開催費の一部(謝金等)に助成金を使用するべく前年度から助成金の一部を繰り越していたが、同時に、計画していた国外での現地調査を実施せず、これを最終年度に繰り越すことになったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
前年度までに実施できなかった現地調査やワークショップ参加調査を行う。平成25年度末に結成した研究会を継続し、シンポジウムや講演会を開催する。データ整理、映像資料の電子化を続行するため、大学院生に謝金を支払う。
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Research Products
(4 results)