2012 Fiscal Year Research-status Report
大航海時代後の美術における他者像の類型・系譜とその象徴的機能
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23520120
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岡田 裕成 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (00243741)
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Keywords | ラテンアメリカ / アンデス / メキシコ / 植民地 / 美術 |
Research Abstract |
本研究は、スぺイン植民地を中心とする新大陸の先住民像に焦点を当て、その類型と系譜を明らかにしようとするものである。この目的に基づき、本年度は8月13日から9月16日にかけて、ペルーおよびスペインに出張した。 ペルーでは、クスコ文書館において、植民地時代インカ貴族の美術品収集について、リマ国立文書館において、植民地時代リマの特権層の財産目録における美術品収集に関する記録文書を収集した。スペインでは、インディアス総合文書館(セビーリャ)、マドリードのアルバ公爵家文書館、ラサロ・ガルディアーノ美術館図書館、国立図書館、アメリカ博物館において、植民地時代先住民首長およびスペイン人征服者の紋章図像に関する史料調査と、関連作品の調査を行った。 その結果、植民地時代初期の先住民首長・征服者の紋章図像およそ300点を確認することが出来た。また、それらの紋章授与をめぐって、先住民首長らが本国スペインの王権に対し、どのような交渉を展開したのかについても具体的な事実関係を知る史料を発見した。さらに、そうした先住民首長の行動が、中世以来のレコンキスタ時代を通して、スペインに確立した貴族認証の制度をなぞるものであることも検証した。 これらの事実を中心に、本年は収集を重ねた文献資料も踏まえつつ、植民地先住民エリートの、紋章図像を中心とする自己表象の系統的分析を重ねた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、スぺイン植民地を中心とする新大陸の先住民像に焦点を当て、その類型と系譜を明らかにすると同時に、「発見」 された他者の像として、あるいは、征服者側から他者の役割を与えられた自己の像として、それら先住民像がヨーロッパ、植民地双方の受容空間において、どのような象徴的機能や意味を担ったのかを解明しようとするものである。 本年はこのうち特に、植民地先住民の紋章/自己表象図像について、ペルーおよびスペインにおいて計画した実地・史料調査を進め、当初想定した程度の成果を挙げることが出来た。その成果を含めた著作は、現在すでに脱稿し、出版の準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
昨年度に続き、関連する史資料を蔵する文書館、図書館の調査を進める。本年度は、ヤギロン図書館(クラコフ)などでの史料調査を軸に、おもにヨーロッパにおいて生成された他者表象としての新大陸先住民像についての研究をおこなう。また、これまでに収集した史資料の分析もいっそう精密におこなう。 1)新大陸の先住民像の類型と系譜を系統的に明らかにするとともに、2)「発見」された他者の像として、あるいは、征服者側 から他者の役割を与えられた自己の像として、それら先住民像がヨーロッパ、植民地双方の受容空間において、どのような象徴的機能や意味を担ったのかを解明する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度は、本研究の重要な課題のひとつである、ヤギロン図書館(クラコフ)蔵のアルベルト・エックハウトのブラジル先住民素描集(未公刊)の調査をおこなう。また、関連情報収集のための国内出張をおこなう。必要な調査機材・消耗品、関連図書資料の購入をおこなう。資料整理のための謝金の使用も見込まれる。
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Research Products
(3 results)