2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520123
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
京谷 啓徳 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (70322063)
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Keywords | ポッセッソ / アッパラート / 凱旋門 / タブロー・ヴィヴァン |
Research Abstract |
今年度は、ポッセッソにおけるアッパラートの使用に関する調査研究を中心におこなった。ポッセッソにおいて中心的なアッパラートであったのは仮設凱旋門である。ルネサンス期のポッセッソにおいては、教皇毎に非常に特徴的な凱旋門が建造され、それはそれぞれ立場を異にする諸集団が新教皇との関係を取り結ぶ場でもあった。その様子について、とりわけ図像プログラム解析の観点から研究をおこない、ポッセッソにおける仮設凱旋門の役割を検討した。とりわけ、多くの記録の残るアレクサンデル6世、ユリウス2世、レオ10世等のポッセッソの際の仮設凱旋門について、中心的に取り扱った。 次いでポッセッソにおけるタブロー・ヴィヴァン(活人画)の使用に関する調査研究としては、とりわけユリウス2世およびレオ10世のポッセッソの際の事例について調査研究をおこなった。それらは厳密なタブロー・ヴィヴァンとはいえないものではあるが、機械仕掛けのアッパラートにタブロー・ヴィヴァン的な趣向が凝らされたことが明らかとなった。同時に、アルプス以北の君主の入市式でしばしば用いられたページェントのタブロー・ヴィヴァンとの比較検討もおこなった。 また近代市民社会におけるポッセッソの構成要素の受容に関する調査研究としては、ポッセッソで用いられた仮設凱旋門やタブロー・ヴィヴァンが、近代以降の市民社会においていかに受容されていったかについての事例の収集につとめた。 以上の研究遂行のために、海外調査としてはイタリア、ヴェネツィアのマルチァーナ図書館、フェッラーラのアリオステア図書館、ローマのヴァチカン図書館、ヘルツィアーナ図書館等で資料収集を行い、また日本国内においても、早稲田大学演劇博物館や阪急池田文庫等において、アッパラートの近代日本への伝搬に関する資料の収集につとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記研究実績の概要に記したように、当初の研究計画に従い、おおむね順調に研究目的が達成された。ポッセッソにおけるアッパラートおよびタブロー・ヴィヴァン、およびその近代への伝搬について、海外および国内調査の図書館および諸研究機関において調査をおこない、資料収集は予定通りに達成された。またそれら資料の分析にも時間をかけ、成果が上がったと考えている。ただし、それを論文として仕上げ、外部発信するには至らなかったため、これは次年度の課題として残された。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究計画に従い、ポッセッソと関連事項との比較研究、すなわち古代の凱旋入城式とポッセッソの関係や世俗君主がローマで執り行った入市式とポッセッソの関係についての考察、およびバロック期のポッセッソに関する基礎資料収集を、海外の図書館における調査や国内研究機関の調査等により推進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ヨーロッパ主要図書館調査のための外国調査旅費、日本国内の研究機関所蔵の資料を調査するための国内調査旅費、および研究関連の書籍購入のための図書費等を予定している。
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Research Products
(1 results)