2012 Fiscal Year Research-status Report
19世紀における「イタリア美術」概念の形成に関する研究
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23520137
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Research Institution | Kyoto University of Art and Design |
Principal Investigator |
河上 眞理 京都造形芸術大学, 芸術学部, 准教授 (20411316)
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Keywords | イタリア美術 / イタリア美術史 / イタリア王国 / 19世紀 / 歴史画 / 美術アカデミー / フランス19世紀絵画 / イギリス19世紀絵画 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀になってイタリア半島に初の統一国家イタリア王国が誕生することにともなって成立した「イタリア美術」という概念の形成過程を、絵画を中心として、遺産としての過去の美術の扱いと、同時代美術の動向との関係を通して明らかにしようとするものである。 研究2年目の平成24年度は当初の研究計画通り、「同時代美術における歴史画の諸相」の解明を主眼とし、19世紀後半にイタリアにおいて制作された歴史画における画題の傾向の分析を進めた。その結果、やはり新たに成立した「イタリア王国」の国家像に結びつけることが可能なテーマが画題の中心となっていると言えそうであるという感触を得た。引き続き次年度においてさらなる研究分析を進めたい。 また本年度は、近隣列強国であるフランス・イギリスでの傾向との比較分析をおこなうために現地に赴き作品を実見した。その結果、上記二国における同時代の歴史画の傾向の一つとして、イタリア・ルネサンス美術家を画題とする作品が多く見出されることがわかった。この点に関して、次年度はさらなる研究・分析を進めるとともに、翻って、イタリア同時代美術、イタリア王国の美術政策との関係も探っていきたい。 一方、「イタリア美術」という概念の形成自体は19世紀後半のイタリア王国という統一国家建国によって始まったものではなく、それ以前からイタリア半島各地における美術史編纂をするなかで唱えられてきたものである。しかしながら、やはり統一国家運動、その結果成立したイタリア王国においてであり、具体的には同国の美術政策の根幹をなしたと考えられるが、次年度、さらに調査・研究を進めたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の3点の理由により、研究はおおむね順調に進展していると考える。 1.2012年9月フランス及びイギリスでの研究調査旅行によって、本研究を推進する上で必要な情報を幅広く得ることができた。 2.国内において研究成果を発表する場を得ることかできた。具体的には、イタリア文化会館大阪・イタリア東方学研究所主催で「イタリア王国の美術外交と日本」と題した講演をおこなった。 3. 2011年度国内イタリア学会大会における「イタリア王国におけるレオナルド・ダ・ヴィンチ像(イメーシ)」と題した研究発表内容を纏め、同学会誌である『イタリア学会誌』への投稿論文を準備中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1.イタリア王国統一以前に、「イタリア美術」について論じている文献の調査・研究を引き続きおこなう。 2.イタリア、フランス、イギリスの19世紀において制作された歴史画における画題の傾向の比較分析をおこなう。 3.海外における実地調査として、引き続きイタリア調査をおこなう。 4.イタリア日本学会(AISTUGIA)の招聘により9月にローマでの講演が決定しており、そこでこれまでの研究成果を発表する。 5.平成23年度に発表した研究を論文にまとめて投稿するとともに、研究最終年度となる次年度は、研究全体のまとめとなる口頭発表及び論文発表を準備したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当該研究に必要な図書、資料整理用品、パソコンソフトなどを購入する。国内及び海外での研究調査の費用に充てる。その他に、印刷費、運搬費、研究成果発表費などに使用する。
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Research Products
(3 results)