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2011 Fiscal Year Research-status Report

ルーモールにおける美学と美術史学

Research Project

Project/Area Number 23520139
Research InstitutionKwansei Gakuin University

Principal Investigator

加藤 哲弘  関西学院大学, 文学部, 教授 (60152724)

Project Period (FY) 2011-04-28 – 2015-03-31
Keywordsルーモール / 美術史学 / 銅版画 / ドイツ:デンマーク:イタリア
Research Abstract

本研究の目的は、ルーモールについて、1、イタリア初期版画研究者(美術史学者)、2、料理と食卓の社交哲学者(美学者)、3、多才な文人、としての業績を調査し、その成果を同時代の同一のコンテクスト内に置いて分析することで、専門学科の枠組みには収まりきらないこの稀有な人物の歴史的、現代的意義を明らかにすることにある。 初年度の重点は、美術史学の実質的創設者としてのルーモールの実像を浮かび上がらせることに置いた。とくに集中的な調査を予定していたのは、有名な『イタリア研究』(1827-31年)とともに、1841年のイタリア初期銅版画研究にも注目して、彼の研究の「実証性」が具体的にどのようなものであったのかについての解明を試みることであった。そのために今年度は、まずルーモール著作集全16巻(のうち、現在入手可能な15巻)および関連図書を備品として購入し、なかでも、いま挙げた2点のテクストの内容を詳細に点検した。さらに、計画調書でも言及した展覧会カタログ(「美術・料理術・家計術――カルル・フリードリヒ・フォン・ルーモール (1785-1843) と文化史の発見――」)に所収の諸論考を精査し、また、2012年3月には、ゲッティンゲン、リューベック、およびコペンハーゲンで、彼が見た版画やその制作と収集の現場についての現地調査を行った。その結果、彼の研究の「実証性」は当時の政治的コンテクストに具体的に強く制約されたものであったということや、版画に対する彼の知識や経験の主要な部分はゲッティンゲンの大学美術収集との直接的接触の中で形成されていたことなどが新たに判明した。 次年度は社交哲学(美学)が研究の中心になるが、今回は充分に明らかにできなかった、ロマン主義者たちとの交流やプロシアの銅版画収集との関連についての調査と分析を継続する。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

入手できなかった文献があったり、訪問できなかった研究機関や美術収集があったりしたが、研究計画そのものに影響を与えるものではなかった。 具体的には、入手予定であった『著作集』全16巻のうち、第15巻(Saemtliche Werke: Band 15: Aufsaetze und Rezensionen)が未刊であったために、そこに収録されることになっている小論文や書評などを点検することができなかった。ただし、この巻も近刊との情報があり、また現時点ではこの巻に収録されたテクストを用いて急いで確認しなければならない問題はほとんどないので、刊行後に内容を確認しても充分に間に合うと思われる。 なお、入手できた、第15巻以外の15巻についても、すべてをくまなく検討しつくしたわけではないが、青年期のルーモールによる銅版画の技術習得や、生涯にわたって続けられた銅版画作品の収集についての詳細な情報や問題解決のヒントが得られる部分も多く、予想以上の成果を得ることができた。 また、ルーモールが滞在した諸都市のうち、平成23年度については、ゲッティンゲン、リューベック、コペンハーゲンなど、おもにヨーロッパ北方の諸都市だけを調査対象にしたために、ミュンヘンやフィレンツェ、ヴェネツィア、ローマなどにある研究機関やコレクションについては平成23年度の調査時には訪問できなかった。これらについては、今後の計画のなかに組み込んで調査を進めていくことになる。ただし、そのことによって研究の全体の進度に影響するほどの問題が生じることは、ほとんどない。 その他の計画についても、とくに大きな破たんはなく、研究はほぼ順調に進展した。

Strategy for Future Research Activity

今後の研究の推進方策に大きな変更はない。 申請時に計画調書に記載した通り、平成24年度には、趣味(味覚)論としての「美学」の社会史的背景を分析し、とくにその内部においてルーモールが占める位置を明らかにする。また平成25年度には、ルーモールが「文人」として詩や文学、素描や版画などの領域で発揮した多彩な才能と、それが美学や美術史学に対して持つ関係について調査する。最終年度の平成26年度には、これまで継続してきたルーモールについての調査や分析を、ウェブページなどを利用した成果公開により、同じ一つのコンテクストの中で生きた一人の人間を扱うものとして総合する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

次年度の研究費の使用計画にも大きな変更はない。 また、研究計画変更や、研究を遂行する上での問題点や新たな課題も、現時点では、とくに存在しない。

  • Research Products

    (4 results)

All 2012 2011

All Journal Article (3 results) (of which Peer Reviewed: 2 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] カルル・ローベルトと考古学的解釈学2011

    • Author(s)
      加藤哲弘
    • Journal Title

      人文論究

      Volume: 61-1 Pages: 77-97

  • [Journal Article] 方法としての受容美学2011

    • Author(s)
      加藤哲弘
    • Journal Title

      美術フォーラム21

      Volume: 23 Pages: 25-30

    • Peer Reviewed
  • [Journal Article] 視覚芸術における連続的物語叙述――「異時同図」概念の再検討――2011

    • Author(s)
      加藤哲弘
    • Journal Title

      京都美学美術史学

      Volume: 10 Pages: 1-38

    • Peer Reviewed
  • [Book] ムネモシュネ・アトラス2012

    • Author(s)
      アビ・ヴァールブルク/伊藤博明/加藤哲弘/田中純
    • Total Pages
      768
    • Publisher
      ありな書房

URL: 

Published: 2013-07-10  

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