2012 Fiscal Year Research-status Report
パラオにおける日本語歌謡の収集と分析―民族音楽学的・言語学的観点から―
Project/Area Number |
23520163
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
小西 潤子 静岡大学, 教育学部, 教授 (70332690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DANIEL Long 首都大学東京, 人文科学研究科(研究院), 教授 (00247884)
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Keywords | 国際研究者交流 / 台湾・パラオ |
Research Abstract |
戦前、日本植民地化にあった旧南洋群島において、現地の人々が日本の音楽を受容しそれを発展させた日本語歌謡を創作した。なかでも、パラオは日本語歌謡の集積・発信地となったが、継承者の高齢化が進んでいる。 本研究では、研究代表者が主体となり、研究分担者の協力の下で、フィールドワークを行い、パラオの日本語歌謡の収集を行う。そして、研究代表者による民族音楽学的な観点からの音楽面およびその文化的脈絡に関する分析、研究分担者による言語学的な観点からの歌詞分析を共同調査研究によって、総合的に分析する。これにより、日本語歌謡成立から伝承にいたるまでの経緯とその音楽的・言語的特徴を総合的に明らかにすることを目的とする。 本年度においては、6月18日(月)パラオ・コミュニティ・カレッジにおいて、公開シンポジウム "Back to the Future" を開催した。研究代表者の小西は、パラオにおける日本語歌謡収集の重要性を主張した。共同研究者のロングは、パラオにおける日本語の口頭伝承のアーカイヴスに関する発表を行った。その他、台湾師範大学から銭善華教授を招へいし、音楽資料のデジタル化の先駆例を紹介してもらい、Nanhua大学からパラオ古典音楽収集の創始者である山口修教授より、1960年代の状況についての発表をしてもらった。パラオ・コミュニティ・カレッジからは、ハワード・チャールズ准教授が、近年のパラオにおける音楽教育の影響についての発表を行い、指導学生の実演も行った。 シンポジウムには文化庁長官や議員をはじめ、100名近くのパラオ・コミュニティ・カレッジ学生や関係者が主席し、パラオ日本語歌謡の収集とアーカイヴの重要性とその課題を確認した。アルコロン村からは、年配の女性たちのグループも参加し、日本語歌謡の実演を披露した。以上のように、本研究課題遂行について、現地からも高い支持を得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初は、最終年度に計画していたパラオのコミュニティカレッジでのシンポジウムを実現した。これにより、成果発表としての位置づけではなく、現地において研究課題の重要性への理解を高め、日本語歌謡収集と分析に対する協力体制を築くことができた。その上に立って、8月および2013年3月に日本語歌謡収集のための追調査を行った。その結果、歌詞、音源、翻訳を含むデータとして、当初予定していた2倍にあたる200曲分ほどを集めることができた。 データが豊富になった反面、採譜作業が進まなかった面は否めない。学生アルバイトによる採譜作業を想定していたが、現地の言葉(特に子音)を聞き取れない学生アルバイトは、旋律を書き取れてもそこに歌詞をあてはめることが困難である。また、どの音源を選択して譜おこしするかなど、その都度判断しなければいけないことが多々生じてきた。結局、研究代表者自らが主体的に譜おこしをすることになったが、1曲を終えるのにかなりの時間を要することがわかった。 以上のことから、計画はおおむね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、歌詞集の集大成に向けて、歌詞と音源データの一致するものの譜おこしを着実に進める。歌詞、音源、意味が散逸していることが作業を滞らせる原因であるが、それがゆえにこの困難を克服して歌詞集を集大成することは、現地への成果還元とわが国の多くの人々に過去から現在にいたる南洋との文化交流の実態を周知することに貢献できる。その目標に達するように譜おこし作業を進めるとともに、分析結果を日本音楽表現学会で経過報告し、会員からの客観的な意見を求めて必要な修正を行うこととする。また、現地での追調査および検証もあわせて行ったうえで、最終的な成果としてとりまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
主たる経費は、歌詞集の集大成のための謝金、印刷費、消耗品費にあてるが、その過程で必要となる現地における追調査、学会参加に伴う旅費を見込んで計上している。
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Research Products
(3 results)