2011 Fiscal Year Research-status Report
長野県諏訪地方におけるラッパ文化の形成に関する研究
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23520168
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
奥中 康人 静岡文化芸術大学, 人文・社会学部, 准教授 (10448722)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2016-03-31
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Keywords | 音楽文化 / ラッパ / 消防 / 文化変容 |
Research Abstract |
長野県諏訪地方におけるラッパ文化の一端を調査するため、7月、8月、10月の三回にわたって、消防ラッパの現地調査を行った(7月:諏訪地区消防協会主催のポンプ奏法及びラッパ吹奏大会(岡谷市)、8月:長野県消防協会主催の消防ラッパ吹奏大会(伊那市)、10月:諏訪地区消防協会主催の合同練習会(諏訪市))。ラッパ吹奏技術の向上を目的した長野県消防協会主催の消防ラッパ吹奏大会が、競技(演奏)に関する規定によって、出場団体の画一化、均質化が顕著にならざるをえないのに対し、諏訪ローカルの大会は県大会の規定に遵守しつつも、部分的に異なったルールを以前より採用しつづけている。とりわけ自由な演奏楽曲の選択に特徴がある。今年度の三回の調査においては、大会の様子をビデオ撮影した他、関係者からの聞き取り調査を行った。研究目的の一つである昭和期の実態やラッパ文化の形成プロセスについては、まだ不明な点が多いが、市町村図書館における文献調査によると、明治以降の長野県内各地において、消防組にラッパが配備され、昭和期にラッパ隊が組織され、地区大会が開催されていく経緯は、消防組(消防団)や地区によってさまざまで、それは現在の統一されたはずの県レベルのラッパ吹奏大会においても、まだ微妙な不和と軋轢として残っていることが確認できる。諏訪地方にみられる自由な楽曲創造活動は、実は吹奏楽団や管弦楽団の経験のある高度な音楽知識をもつ団員(この地方の職業音楽家で、消防団員・消防ラッパ隊員を兼ねている)によってリードされている。ただし、その高度な知識に基づいおて創作(編曲)された楽曲は、決して高踏主義に陥らず、他のメンバーにも強く支持され、独特の音楽文化を形成している点が、きわめて興味ぶかい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調査対象である消防ラッパ隊の演奏は、消防協会のいわば公的行事であるため、調査はコンスタントに実施されており、インフォーマントの友好的な協力により現地での取材調査は順調に進展している。ただし、滞在期間が短く、調査の量に関しては十分ではない。また、消防団員の間には横のつながりは強いが、タテの関係が薄く、過去の事情に詳しい消防団員OBへの聞き取り調査については不十分であり、今後の課題となっている。資料調査についても、おおむね順調に進展しているが、現地(諏訪)での滞在期間の短さから、コピー、筆写等に限界が生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の研究予定どおり、諏訪地区における調査を継続する。基本的には、昨年度と同じく、ラッパ吹奏大会の取材をメインとしつつ、公共図書館における文献調査、および、関係者へのインタビューを行うが、昨年度の反省から、滞在期間を少し延長することを検討している。また、当初は、ラッパ文化が音楽知識のない消防団員によって担われていると想定していたが、かなり高度な知識を有する音楽家の存在があきらかになったため、調査の焦点をかれらにあてる必要も生じた。近年のラッパ文化を考察するには、地方におけるブラスバンド、オーケストラの音楽文化の広がりについても言及することになる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査地(諏訪地区、とくに下諏訪郡を中心に)への旅費、滞在費、およびビデオ機器とメディア(DVDおよびHD)等、また、地方における消防組、消防団の歴史関連書籍等。国立国会図書館、公文書館等(東京)における資料調査の諸経費。
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