2013 Fiscal Year Research-status Report
長野県諏訪地方におけるラッパ文化の形成に関する研究
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23520168
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Research Institution | Shizuoka University of Art and Culture |
Principal Investigator |
奥中 康人 静岡文化芸術大学, 人文・社会学部, 准教授 (10448722)
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Keywords | 音楽 / 楽器 / 文化変容 |
Research Abstract |
・研究実施計画にしたがって、継続的にフィールドワークをしている、諏訪地方における消防ラッパ吹奏大会―6月16日(岡谷市消防団の大会)、2013年7月7日(諏訪地区の大会)―、および、長野県消防協会主催のラッパ吹奏大会(8月4日)を取材、調査した。 ・近年の諏訪地方の消防ラッパ文化における重要人物(岡谷市消防団のA氏)へのインタビュー調査をおこなった。従来の消防団においては、音楽経験者の団員はほとんどいなかったが、十数年前から音楽の専門的知識をもった団員が加入したことにより、吹奏技術が向上しただけでなく、演奏曲目にも変化がみられるようになった。自分たちで演奏をする曲目をアレンジ、あるいは作曲することによってレパートリーを拡大していったのだが、その中心的役割を果たしたA氏からの聞き取り調査によって、その具体的な経緯を知ることができた。 ・明治期におけるラッパ受容について、初期金管楽器製造についての文献調査により、国産ラッパ製造の起源として、これまでの定説となっていた明治17年大阪工廠説や、明治20年代の江川仙太郎説よりも10年以上時代をさかのぼった、「明治8年」(宮本氏)が起源である可能性があることを把握した。 ・これらと並行するように長野県における市町村誌、各地の消防団史、消防団員(消防組員)の個人史や回想録などの文献調査によって、とりわけ、諏訪大社の御柱にかかわる記事を渉猟することを通して、明治~昭和の消防と祭礼における信号ラッパの実際的な使用の実態を明らかにする作業を継続している。また、この30数年に関しては、御柱関係の画像資料を収集整理することにより、ラッパの存在の確認に成功している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
長野県内の市町村誌の類、個人史の類を網羅的に分析しようとしているが、その中にラッパもしくは喇叭に関する記述を発見することは、調査地に赴いた短期間の限られた時間のなかで遂行することが難しいものの、おおむね順調といえる。 ただし、そもそも記録される習慣のなかったジャンルであったため、インタビューにおいて聞き取り対象である当事者たちの記憶があやふやであり、調査が急がれる。
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Strategy for Future Research Activity |
継続調査をしている夏季のラッパ吹奏大会の調査を予定している。平成26年度は、まだ調査をしていない茅野市、富士見町、原村のいずれかを対象として、インタビュー調査も計画している。 文献調査は、これまで収集した文献の分析によって、日本のラッパ史の具体的な構想を練ることに着手することになる。具体的には、楽譜の整理から見えてくること、ラッパ製造の歴史、長野県内諏訪地方におけるラッパ文化の形成について等。 同時に、比較研究として長野県外でのラッパ文化についても目配りをする。
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Research Products
(1 results)