2011 Fiscal Year Research-status Report
コミュニティ音楽療法を核とした新しいコンサート・モデルの研究
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23520174
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
木村 博子 熊本大学, 文学部, 准教授 (00136699)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | well-elderly、ポルトガル |
Research Abstract |
今年度は2回のコンサートを実施した。いずれも熊本市子飼商店街で継続実施しているコミュニティ音楽療法を核として高齢者の地域におけるよりよい生活を目指して企画されたもので、第1回目は平成23年7月に東北大震災復興祈願をテーマとして実施した。コミュニティ音楽療法参加高齢者は合唱で出演し、その真摯な演奏で来場者を魅了した。人生経験を重ねた高齢者ならではの被災者に対する深い哀悼と共感は、コンサート全体を祈りにかえる原動力となり、客席とステージは一体となって大きな感動をもたらした。コンサート後に来場者から寄せられた多くの賛辞は高齢者に大きな自信を与えるとともに社会参加への意欲をかきたてるものともなった。 第2回目は第1回目の成功を踏まえ、さらに広いホールで実施し、高齢者の音楽力を広く地域に発信することにした。高齢者は一層の自己研鑽に励むとともに、コンサートの企画や広報にも協力を申し出るなど、単に与えられた場に出るという受け身の立場を脱して、能動的かつ積極的に行動するようになった。その結果コンサートには130名を超える来場者があり、地域活性、地域交流にとっても大きな意味をもつものとなった。来場者は、高齢者施設から来られた十数名の方々、若い学生サークル、福祉関係者など様々な方がおられ、地域連携が一層進んだことが感じられた。またコミュニティ音楽療法に参加している学生たちが高齢者の音楽嗜好を勘案したミュージックビデオを制作上演し、世代間交流も促進された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
東北大震災により、高齢者の間でも「なんとかしなければ」という社会参加へのモチベーションが高まり、それが今年度のコンサートへの熱心な参加につながったと思われる。それは高齢者がコンサートを通して他者とのつながりを回復したり、新しい関係性を作ることにつながり、結果的に高齢者の生を豊かにすることにつながったといえよう。それはまたコンサートのスタイル自体を多様なものに導く契機ともなった。震災と言う大きな犠牲の上に払われたこの絆をさらに有意義なものにするために、今後はさらに検討を重ねて早期に範となる複数のコンサートモデルを確立したい。
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Strategy for Future Research Activity |
コミュニティ音楽療法を継続実施しつつ、さらに地域の高齢者施設へ音楽療法を拡大して施設内コミュニティ音楽療法を行ない、それらと地域をつなぐ試みをコンサートを介して行なう。それと子飼地域における音楽療法とを比較検討しつつ、いわば地域統合としてのコンサートを模索していく。また他地域や外国との連携も深め、すでに開始しているポルトガルとの共同研究の他に、コンサートに関する共同研究を行なう研究機関を探す。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
コミュニティ音楽療法実施場所の賃貸料、研究補助者(音楽療法士)の雇用経費、コンサート実施に関わる諸経費、資料整理に関わる謝金、成果発表のための旅費、楽譜等資料購入費などが主な研究費の使用予定品目である。
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