2012 Fiscal Year Research-status Report
コミュニティ音楽療法を核とした新しいコンサート・モデルの研究
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23520174
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
木村 博子 熊本大学, 文学部, 准教授 (00136699)
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Keywords | CoMT, Norway |
Research Abstract |
今年度も熊本市子飼商店街で継続実施しているコミュニティ音楽療法を核として、高齢者の地域における社会生活の質の向上を目指して2回のコンサートを実施した。 第1回目は平成24年7月に「クラシックの力」をテーマとして大学内ホールで行い、80名ほどの聴衆が参加した。コンサート後の聴衆アンケートには合唱で参加した高齢者の音楽が他の高齢者を勇気づけたことが示唆され、それは他のプロの演奏家の演目よりも高い評価を得た。また出演高齢者がコンサート後にコミュニティ音楽療法セッションに一層積極的に係わる姿勢が見られ、こうしたポジティブな循環システムが高齢社会の健全な育成に有効であることが示唆された。これらの成果は国内外の学会で発表する機会を得た。 第2回目は平成25年3月に熊本県立劇場大会議室で実施した。テーマは「復興支援」で、東北大震災と九州北部豪雨災害の被災者の支援の一環として行なった。これは学生の発案にコミュニティ音楽療法参加高齢者が賛同する形で行なわれ、参加高齢者は被災者を元気づけるべく、難しい復興支援ソングを懸命に練習した。被災地と熊本市を結ぶために、本研究者は学生と共に阿蘇市の被災者が入居されている仮設住宅(ここも高齢化が顕著)において定期的なコミュニティ音楽療法を開始、長期的な展望で被災地と熊本市をつなぐ音楽活動を始めた。地理的に離れていて、移動もままならない双方の高齢者たちの思いがつながるよう、コンサートでは被災地に送るメッセージツリーを聴衆と共に製作し、コンサート後に被災地に届けた。この試みはコンサートが地理的に離れたコミュニティを結ぶ可能性を持つことを示唆する重要な展開であり、今後も継続発展させていく必要性を感じる。 また、平成25年1月からは、ノルウェーで高齢者合唱団をコミュニティ音楽療法として研究しているベルゲン大学のB.Stige氏と比較研究を始めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は当初の計画に沿って順調に進展しており、成果発表の機会も与えられ、海外との協力体制も整いつつある。特に被災地との連携をとりつつ、新しいコンサートモデルを再考する機会を与えられたことは意義深いことであった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究の最終段階に向けて精力的に統括を進める。成果発表を論文の形でまとめるとともに、8月にノルウェーで開催されるヨーロッパ音楽療法学会での発表(口頭発表決定済み)を一応の統括としたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
前年度同様、コミュニティ音楽療法実施施設の借上げ料、コンサート実施費用、研究補助のための人件費、謝金、成果発表旅費などに使用する予定である。
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