2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23520186
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
乾 淑子 東海大学, 国際文化学部, 教授 (40183008)
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Keywords | 着物 / メディア / 新聞 / 雑誌 / プロパガンダ / 近代戦 / 娯楽的報道 |
Research Abstract |
明治から昭和初期にかけて製造・消費・鑑賞された着物の戦争柄について、その一部であるメディアと関連のある図柄について考察するのが本研究課題である。 日清戦争期の錦絵を中心とした報道は、これに演劇なども絡まって人々の関心をあおり、更にその影響を受けた着物柄が作られることは現在と同様な娯楽的報道である。 また逓信総合博物館(2014年3月に郵政博物館と改称)所蔵の日露戦争期の絵葉書図版により、着物柄に表現された意匠の一部は絵葉書からほぼそのまま転用されていることが分かった。絵葉書は明治33年の私製はがきの解禁以降に徐々に盛んになり、無料だった軍事郵便として兵士たちに贈るなどの理由から大人気であり、売り切れが続出したものである。そのような状況も折り込み、百貨店も便乗して戦争柄を売り出す時代背景を反映するものと言えよう。 古賀中佐が率いた戦闘に関する昭和の着物については2011年度の報告書に記した通りであるが、それとは比べものにならないほど大きく報道された爆弾(肉弾)三勇士に関する図柄は、存在を知られるものだけでも10種以上になる。これらの特定の人物、作戦行動などを伝える意匠の場合は報道する新聞紙面をそのまま染めることがあるが、用いられるのは朝日と毎日の2紙のみである。もちろん当時も多くの新聞が発行されていたが、硬派の政論紙である大新聞と軟派な社会面を売り物にする小新聞とを峻別した明治期の影響により、昭和の三勇士報道などについてもこの2紙を引用することが戦争柄着物として格調高く相応しいと考えられたのではないだろうか。その引用はどれも当該紙面をよく再現している。 上記のように日清、日露、日中戦争のすべての時期において多様な視点があり、それのどれもメディアとの関連を考える上で本質的な問題を含む。これらはすべて、吉川弘文館から出版される単著に収める。
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Research Products
(4 results)