2011 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
23520192
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Research Institution | Musashino Academia Musicae |
Principal Investigator |
楢崎 洋子 武蔵野音楽大学, 音楽学部, 教授 (50254264)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | 器楽作品 / 声楽作品 / ジャンル概念 |
Research Abstract |
器楽と声楽の両ジャンルで作品を書いている日本の作曲家の作品の出版楽譜と音盤、それらの作曲家に関する、あるいは作曲家による著述の収集を始めるとともに、それらの資料の解読を始めた。本研究では、独唱曲、合唱曲を声楽作品とみなし、独奏曲、重奏曲、管弦楽曲を器楽作品とみなす。平成23年度は、林光(1931~2011)、松村禎三(1929~2007)、間宮芳生(1929~)をはじめ約70名の日本の作曲家に関する資料を収集した。 声楽と器楽の両ジャンルをほぼ同程度の比重で書いている作曲家の作品には、声楽作品と器楽作品のあいだにランクの差を設けていることは見受けられず、声楽作品と器楽作品のあいだに互換的な関係が見られる。具体的には、各作曲家の器楽作品の手法を声楽作品にも用いることによって、独唱曲や合唱曲が、器楽的、劇的な様相を帯びてき、声楽作品の領域を超えて上位のジャンルを示唆するものになっている。しかし、それらの作品を書いている作曲家たちは、声楽と器楽を複合させたジャンルであるオペラを必ずしも積極的には書いておらず、書いていても、それらのオペラは、ヨーロッパにおけるオペラ概念やオペラの様式には必ずしも当てはまらない、独唱曲、合唱曲と、器楽曲、管弦楽曲との中間領域にあるジャンルを示唆している。これらのことから、独唱曲、合唱曲、オペラのそれぞれに対するジャンル・イメージおよび各ジャンルの重要性の度合いが、日本の作曲家と欧米のそれとのあいだで異なることが想定される。今後、声楽と器楽の中間領域としてのジャンルに明確なジャンル概念を見出すべく考察する指針を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
対象予定の作曲家の器楽作品と声楽作品の出版楽譜、音盤およびそれらの作品に関する著述等の資料を入手したが、作曲家間で出版資料の分量に偏りがあり、考察を進めるにあたって、対象範囲の特定と方法の検討が必要となったため。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題にとっての重要性、および資料の入手可能性をふまえて対象予定の作曲家を特定し、分析、考察作業を促進する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
詳細な考察の対象として特定した作曲家に関して、すでに入手した出版楽譜、言説資料のほかに、未出版楽譜や未公開言説資料を入手する経費に使用する。
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Research Products
(4 results)