2012 Fiscal Year Research-status Report
アジア、ヨーロッパ、アフリカに関わるテキスタイル・グローバリゼーションの研究
Project/Area Number |
23520203
|
Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
吉本 忍 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 教授 (10124231)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
金谷 美和 国立民族学博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (90423037)
|
Keywords | 国際研究者交流 オランダ、インドネシア、スイス / 染織 / ファッション / インド / インドネシア / 東アフリカ / グローバル化 / プリント更紗 |
Research Abstract |
本研究の目的は、現在アジア、アフリカにおいて民族衣装の素材として広く使用されているプリント更紗が、インドネシアやインドの伝統的染織技法とデザインをもとにして、ヨーロッパの植民地支配を背景にしたグローバルな交易と産業革命による技術革新によって創出され、広く展開してきた歴史的経緯を、サンプル帳をはじめとする資料の検討によって実証的に明らかにするものである。 平成24年度、研究分担者の金谷は、3月にオランダのフリスコ社ミュージアムとロッテルダム世界博物館において19世紀末から20世紀初頭にかけてプリント会社が作成したプリント更紗のサンプル帳の調査を行った。昨年度における調査によって、研究代表者の吉本と、分担者の金谷は、グローバルな交易と技術革新が契機となってプリント更紗がアジア、アフリカ向けにオランダで生産されたことを明らかにするような、以下のような貴重な資料を発見した。 ①東アフリカ向けプリント更紗製品のサンプル、②英領インドで収集された染織品、③東アフリカで収集された初期カンガのサンプル、④インドネシア向け、東アフリカ向けのイミテーション・バティック。 これら資料のうち①~③について重点的に調査を行い、画像の電子データ撮影、文字資料についての一部解読を行った。さらに、昨年度の調査によって入手したオランダ語の文献2点の翻訳を行った。 また、旧大阪府産業デザインセンターから寄贈されたプリント更紗の資料のうち、東アフリカ向けの日本製プリント製品について、研究補助者とともに、画像データの撮影、文字データの整理、入力を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の目的は、昨年度の調査で明らかになったオランダのサンプル帳の全体像のなかから研究テーマを決め、さらにそのテーマに沿ったサンプルを選択して集中的に調査を行うことであった。このことから、当初の目的はほぼ達成することができたと言える。また、旧大阪府デザインセンター寄贈の資料をもとにしたデータの整理も予定通り順調に進んでいる。 分担者の金谷は、オランダでの資料調査をもとにして、2本の和文論文を執筆し、1本の英文報告書を執筆することができた。 ただ代表者の吉本は今年度、国立民族学博物館の特別展の準備、開催のため極めて多忙で、予定していたオランダのフリスコ・ミュージアム、スイスのグラールス博物館の調査に行くことができなかった。そのため、インドネシア向けと東アフリカ向けのイミテーションバティックのサンプルの調査が本年度はできなかった。また、吉本がスイスでの調査に行くことができなかったため、ドイツ語手書き資料の翻訳者が見つけることができなかった。
|
Strategy for Future Research Activity |
6月に研究代表者の吉本がプリント更紗の調査のために、オランダ、スイスに行く予定である。そのうち、オランダのフリスコ・ミュージアムでは、一昨年、また昨年の調査において選択しておいたインドネシア向けと東アフリカ向けのイミテーションバティックのサンプル帳を重点的に調査する。また、スイスにおいては、手書きのドイツ語の資料の翻訳者の候補者と面談し、翻訳の依頼を行う予定である。翻訳者とのやりとりは、依頼後は、メールにて行う。 吉本と金谷は、8月にインドネシアにおいてイミテーション・バティックの生産技術の調査を行う。オランダのプリント会社は、インドネシアのバティックを模倣することでイミテーション・バティックの生産を可能にしたが、その技術が逆にインドネシアに流入し、プリント更紗の生産を発展させたらしいということが、これまでの調査で明らかになってきた。その事実を確認するために、インドネシアでイミテーション・バティックの生産に用いられている技術の現地調査を行う。 旧大阪府産業デザインセンター寄贈の資料については、今年度も引き続き、研究補助者とともにデータの整理を行う予定である。 本年度は最終年度であり、研究分担者の金谷は研究成果のとりまとめを中心に研究をすすめる。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究代表者の吉本が、オランダ、スイス、インドネシアでの調査のための海外旅費を用いる。研究分担者の金谷は、インドネシア調査のための海外旅費と、旧大阪府デザインセンター寄贈の資料の調査のための国内旅費を用いる。旧大阪府産業デザインセンター資料のデータ整理のために謝金を用い、ドイツ語翻訳のための費用を計画している。
|
Research Products
(5 results)