2012 Fiscal Year Research-status Report
1968年以降の現代文学とサブカルチャーの相互交渉と再編に関する総合的研究
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23520205
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
押野 武志 北海道大学, 文学研究科, 教授 (70270030)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千田 洋幸 東京学芸大学, 教育学部, 准教授 (40251566)
西田谷 洋 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (70378230)
横濱 雄二 甲南女子大学, 文学部, 講師 (40582705)
竹本 寛秋 鹿児島県立短期大学, 文学科, 准教授 (20552144)
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Keywords | サブカルチャー研究 / テクノロジー / ゲーム理論 / 台湾 |
Research Abstract |
押野武志は、種々のミステリの具体的な分析を通して、「物語」「フラット」といった分析概念を、活字メディアと視覚メディアを横断的に分析できる概念として再定義した。千田洋幸は、1990年代以降の文学/文学理論の衰退という状況、さらに1995年における社会的・文化論的転回を踏まえながら、多様な文化ジャンル相互の葛藤と溶解について、村上春樹、村上龍、庵野秀明、下田正美、新海誠等の表現者を中心に考察した。西田谷洋は、アニメのみならず、マンガ・TVドラマ・ライトノベル・ゲームなども素材に多様に現れる他者との接続方法の今日的なありようを検討し、さらに定義上内的構造と同時に神話への言及性を持つメタフィクションの理論的検討と「新世紀エヴァンゲリオン」以降のテクスト分析を積み重ねた。横濱雄二は、1990年代から2000年代にかけての複数のメディアミックス作品におけるジャンルの役割を比較検討し、その分析を重ねることで、当該年代の日本のサブカルチャーにおけるジャンル形成と展開の文脈を明らかにした。竹本寛秋は、テクノロジーと文学・サブカルチャーが取り交わす相互交渉を明らかにするため、「テキスポ」や「文学極道」「現代詩フォーラム」「うたのわ」などの、文芸相互批評サイトの様態や、ニコニコ動画などにおける職人文化の形成、及び「初音ミク」をめぐる状況が示すような、ネットワーク上の創作活動が商業資本と関係を取り結ぶありようを分析し、2000年代以降の文学・サブカルチャーを、今日の情報環境の中において分析する方法論を構築する作業を行った。 そのような研究成果を踏まえ、平成24年12月15日・16日、北海道大学において、国際シンポジウム「現代日本文学とサブカルチャーの交錯」を開催した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究成果の段階的な公開と他の海外を含めた研究者との意見交換、情報収集を兼ねて、計画通り、国際シンポジウム「現代日本文学とサブカルチャーの交錯」を開催することができた。台湾の日本のサブカルチャー研究で優れた研究業績のある柳瀬善治氏(静宜大学外語学院日本語文学系副教授)、陳國偉氏(台湾中興大学台湾文学トランスナショナル文化研究科助理教授)、榊祐一氏(南台科技大学応用日語系助理教授)の3名を招聘し、討議することで、本共同研究の各自の研究課題を深化・発展することができた。その結果、各メンバーは、研究の目的に従った研究業績を当該年度に多く発表することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成23年度と24年度の研究成果を踏まえて研究を推進していくのはもちろんのことだが、共同研究の最後の年度にあたるこの年には、多くの成果をまとめる総括的な研究の段階に至らなければならない。 特に前年度の国際シンポジウムを中心とした成果を踏まえて研究報告書を執筆し、研究成果公開促進の補助金等を利用しつつ、出版公開を目指す。従ってここでは成果報告の最終的な検討と点検、報告書原稿の相互読み合わせなどが重要になってくるであろう。 研究全体の総括を兼ねて、平成25年8月30日に甲南女子大学において開催されるテクスト研究学会・第13回大会にサブカルチャーに関するパネルを組んで参加し、さらに研究報告会を開催して研究を終える予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
基本的な文献や資料は本年度で概ね準備できた。次年度は、本年度に引き続き、研究成果の公開と他の研究者との意見交換、情報収集を行うために、研究会へ参加し、さらに、研究報告会を開催する。 そのため、物品費以外の研究会開催に関わる諸経費・旅費等が占める割合が大きくなる。
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Research Products
(18 results)