2012 Fiscal Year Research-status Report
大正期函館圏モダニズム文化の研究―長谷川海太郎・久生十蘭・水谷準を中心に―
Project/Area Number |
23520206
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Research Institution | Hokkaido University of Education |
Principal Investigator |
小林 真二 北海道教育大学, 教育学部, 准教授 (50292488)
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Keywords | 函館 / モダニズム / 大正期 / 長谷川海太郎 / 久生十蘭 / 水谷準 / 文学 / 地域文化 |
Research Abstract |
大正期から昭和初期にかけて函館で刊行された雑誌・新聞・書籍、および大正期道南の文学・演劇・音楽・建築・海運・国際交流などに関する諸資料を中心に、函館市中央図書館所蔵資料を活用して長谷川海太郎、久生十蘭、水谷準および函館圏モダニズム文化をめぐる状況の調査・研究を実施した。 中でも、久生十蘭(阿部正雄)の生家・阿部回漕店をめぐる調査・研究により、十蘭文学における「船」「ロシア」「海難」などのモチーフの背景を明らかにすることで、明治末から大正期にかけての函館文化と十蘭文学の深い関連を指摘し、地元・函館との関連は希薄だとする定説に変更を迫ったことは重要な成果と位置付けられる。また、長谷川海太郎、久生十蘭、水谷準の重要新資料を相次いで発見したが、これらについてはさらに周辺状況などを詳細に調査・検証し、適切な位置付けを与えた上で来年度以降まとめたいと考えている。 研究成果は、小林真二『函館学ブックレット 函館時代の久生十蘭――新資料紹介を中心に――』(2012年,キャンパス・コンソーシアム函館)、同「葡萄畑から」(『定本 久生十蘭全集 月報11』2012年,国書刊行会)において活字化し、その一部は江口雄輔編「久生十蘭年譜」(『定本 久生十蘭全集 別巻』2013年,国書刊行会)に活かされた。また、地域での2度にわたる市民向け講演会「久生十蘭 人と魅力」(函館朗読奉仕会講演,2012年6月21日)、「久生十蘭の魅力」(函館朗読紀行講演,2012年7月26日)にも盛り込み、広く社会に還元することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大学改革の検討等の業務に多大な労力を割かれているため。また、当初の方針を一部転換し、大正期函館3紙(『函館新聞』、『函館毎日新聞』、『函館日日新聞』)の電子データ化を進め、これを主力対象資料とした研究に注力することにしたため、その検討および準備のために時間がかかってしまったことも少なからず影響している。
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Strategy for Future Research Activity |
長谷川海太郎、久生十蘭、水谷準の関係者および関係機関への取材と、電子データ化された大正期函館3紙を主対象とした調査・研究、長谷川海太郎および水谷準の著作リストの補足、の3点を特に精力的に進めたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
1、今年度電子データ化を完了した大正期『函館新聞』に続き、大正期『函館毎日新聞』および『函館日日新聞』の電子データ化を進める。 2、3作家の家庭環境や生家の職業、居住地や学校をめぐる状況などについて、関係者や関係機関に出向き、録音機材等を用いた取材調査を行う。 ※新聞マイクロフィルムの電子データ化をめぐる検討・所蔵機関との交渉等に手間取ってしまったため、前年度に予定していた形では執行できなかった研究費が残っており、それを全て本年度に執行する予定である。
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Research Products
(1 results)