2011 Fiscal Year Research-status Report
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23520232
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
山田 俊治 横浜市立大学, 都市社会文化研究科, 教授 (10244485)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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Keywords | メディア史研究 |
Research Abstract |
本研究は、「東京日日新聞」という現在の「毎日新聞」の前身である、明治大正期の主要な大新聞に現れた文化認識を探ることで、新聞各社によって行われている文化事業の起源を探るとともに、その歴史的な意味を明らかにするという点で、研究的な重要性がある。そのためには、明治国家が形成された一八九〇年頃までの全紙面を入手することが、研究の前提となっている。なぜなら、当該新聞社の文化認識は、必ずしも社説欄だけではなく、雑報欄や寄書欄、広告などにも示されていることは、すでに予備調査によって明らかになっていたからである。 しかし、この全紙面の紙媒体での入手に手古摺ってしまったため、本年実施できた年表は、すでに入手済みであった創刊時から一八七五年までの紙面を精査した結果に基づくのみであった。しかし、そこからだけでもいくつかの特徴的な点が浮かび上がっている。中でも、一八七四年に入社した福地源一郎の思想が重要であったことが判明した。福地は、幕末から入社以前に四回の洋行体験をもち、そこから生成された近代的な文化認識は、官吏時代の著書から読み取ることができる。そうした福地の思想は、社説の中に生かされていて、福沢諭吉の功利主義的な文化認識を相対化できる言説を数多く残していた。この思想的背景を探ることは、今後の課題として必須のものとなった。 本研究以外では、雑誌「文学」の依頼に基づいて、「ことわざ」の特集、および山田美妙の小特集のために論文を投稿した。また、前年度から引き続き作業にかかっていた『山田美妙集』第一巻の校訂作業に従事し、この四月に刊行を見た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
最大の原因は、「東京日日新聞」の全紙面を紙媒体で入手することに手間取ったことにあった。 研究助成の決定を見る以前の春休みの段階では、古書店のサイトに復刻版が掲載されていて、簡単に入手できるものと思われた。しかし、研究助成決定後にすぐにアクセスしたが、残念ながらすでに売り切れになっていて、そのサイトを見出すことすらできなかった。ほかの古書店や発行元などを当たってみたが、在庫切れで入手できず、国会図書館での複写に切り替えて、本大学図書館を通して依頼してみた。しかし、長期間にわたることや、金額的で折り合わず、結局見送らざるを得なかった。 そこで、マイクロフィルム自体を入手することにして、やっと一二月になって入手できたが、全紙面調査にはフィルムの状態では目に負担をかけすぎるため、紙媒体への複写が必要になった。複写を業者に依頼するために何度か交渉したが、大量なために金額が助成金を大幅に超えてしまうため、研究の余暇に自己責任でするほかはなくなった。しかし、そこでも、本大学図書館の複写機器が不備という障害に遭ってしまった。二月に入って交換されることになったが、複写作業は中断を余儀なくされた。そうした事情のため、研究協力者の助力を仰いで、新しい複写機器が到着してすぐに作業を継続したが、結局三月に入ってやっと実施するような状態であった。 こうした事情のため、年表作成が十分には捗らなかったが、次年度以後に期待する点は多い。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画自体に変更はないので、今後も当初の研究計画によって進めていくことになる。まず最初の課題は、引き続いて「東京日日新聞」の全紙面を紙媒体で入手することである。現在、図書館の複写機器が整備中であるため、復活し次第全力で複写作業に取り掛かり、一八八七年までの紙面を一覧できる製本済のツールを作製することにする。これは、紙媒体を散乱させないためにも必要な処置である。 その後は、これまで継続してきた紙面調査を続行して、「東京日日新聞」の文化認識を測定できる年表を作製する。すでに、これまでの調査でも明らかになったように、福地源一郎の著作や、ほかの記者の著作も、その思想的な背景を探るためにもぜひ入手する必要性も増してくるであろう。そのために、古書による収集作業も、同時併行的に実施していくつもりである。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず必要となるのは、複写作業を委託した研究協力者への謝金である。これは、本学の規定に従って実施していくつもりである。そのほかには、すでに複写済のものも含めて、生協などを通じて製本していく予定である。これは、長期間の複写物であるため、何分冊に分けて製本することになり、今年度の主要な支出になると思われる。 さらに、「東京日日新聞」紙面だけではなく、記者の思想的背景を探るために、古書による著作の収集も必要になってくる。これは、既存の全集などには収録されていない資料が多いため、やむを得ない処置である。そのほか、できれば当時の読者への反響についても測定できる資料があれば、それらの入手にも力を尽くしていこうと思っている。
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